不穏な来訪者

アマリエ

第1話不穏な来訪者

 朝早く、玄関の呼び鈴が鳴ったので、行ってみると、全く知らない男が訪ねてきていた。男は身分証明書を提示し、某スーパーの万引きGメンだと名乗った。男によると、昨夜、私がスーパーで買い物した際に土産物コーナーにいるところをGメンに目撃されており、私が買い物をした直後に、土産物2点がなくなっていたとのこと。念のためになくなった土産物がないか家の中を確認させて欲しいとのことだった。

  自分にはやましいことは全くなく疑われるのも嫌だったので、その男を家の中に入れた。男は家に入ると、部屋中の戸棚やタンスの中やクローゼットの中まで探し始めた。大切なものや恥ずかしいものまで漁られ、プライバシーの配慮も何もなく、その光景を見ていてだんだんと腹が立ってきたのだった。私は、「あなた、警察でもないのに何でそこまでする権限があるのですか?」 「スーパーに文句の電話を入れますよ」と男に言った。男は、「どうぞ、ご自由に」と返答した。私はプンプンして、店に苦情の電話を入れた。 店長に取り次いでもらったが、店長は私が土産物コーナーで不審な行動をしているのをGメンが目撃していたとのことで、すべてCメンに任せているとのことで柔軟な対応はしてもらえなかった。そうこうしているうちにGメンが盗まれた土産物2点をタンスの中から発見していた。私は「全く身に覚えがなく、何かの間違いだ」と弁明したが、「購入履歴がなく、盗まれたものに間違いない」と男に断言された。

 私は警察に引き渡されると、被疑者として留置所に拘留されて取り調べを受けた。取り調べに対して、私は自分に非がないことを一貫として伝え、万引きを認めなかった。しかし、盗難品がなぜ自宅にあったのかまでは説明できなかった。警察からは罪を認めなければいつまでも拘留が続くことになり、やがて裁判にかけられるとのことだった。

 その夜、拘留所で当番弁護士と面会した。私は弁護士に万引きGメンなる男から濡れ衣を着せられており、万引きなど事実無根であることを訴えたが、自宅から盗品たる証拠品が見つかっている以上は万引きしていないことを立証する以外に無実を証明することは困難であることを告げられた。そして弁護士からは無実を争うよりはスーパー側と示談交渉を進めて訴えを取り下げてもらう方が現実的だとのアドバイスをいただいた。私はすぐには決断できなかったので、その日は弁護士に帰ってもらい、今夜考えてみることとした。

 私は硬くて簡易な寝床の中でどうしてこんなことになったのか考えていた。あの万引Gメンはなぜ私がスーパーを出た時に声をかけなかったのだろうか。しかも翌日になって私の家に来訪してタンスの中から盗品が出てきた。私は天地天命に誓って盗んでなどいないし、タンスの中に盗品があるはずがない。それなのになぜ盗品がタンスの中に入っていたのだろうか。万引Gメンが私を罠にはめているのだろうか。一体何のために。考えれば考えるほど、不可解でわからないことだらけだった。しかし、時は一刻と進んで事態は私に不利に向かっていることだけは実感できた。会社もクビになるかもしれない。 私は自分が置かれている理不尽な状況に憤りを感じ、自分の運命を呪い、悲しくなった。

 翌朝になっても、警察からの取り調べに対して、私は自分の罪を認めなかった。私は昨夜会った弁護士に再度接見したい旨の要望を警察に伝えた。昨夜の弁護士が面会にやってきて、心づもりができたかどうかを私に問うた。私は弁護士にスーパー側と示談を進めてもらうように依頼した。

 弁護士がスーパー側と交渉して示談内容がまとまった。200万円の違約金を支払うことと、そのスーパーに二度と出入りしないことが条件だったので、その条件を呑むことで、スーパー側からの訴えを取り下げてもらい、拘置所から無事に釈放された。

 理不尽であり、弁護士費用も含めて痛い出費ではあったが、無事に社会へと戻ることが出来た。その後、約束でもあり、そのスーパーには行かなかった。しかし、沸々と起こる怒りの炎は収まらなかった。一体、誰が何のために、こんな手の込んだことをして私をはめたのだろうか。私は私立探偵を雇って事件の全容と首謀者をさがしてもらうこととした。そして驚きの事実を知ることになったのだった。

 

 そこで質問です。

 事件の全容は何だと思いますか?

 事件の首謀者は誰だと思いますか?

 何のために彼は万引き班にしたてられたのでしょうか?

 

 2つの展開を用意しました。

① 犯人は別れた元恋人でした。

 元恋人は万引Gメンと繋がっており、復讐と嫌がらせのために合鍵を使って部屋に忍び込み、盗んだ土産品を置いていったのでした。

 後腐れのない別れ方をしないといけませんね。怖いです。

② それと実はもうひとつの回答を考えていました。

 犯人は多重人格の私自身でした。もうひとりの自分が鮮やかな万引きを繰り返すも、スーパー側も全く足をつかめず、しびれを切らして凄腕Gメンを使って、一か八かの自宅への突撃を試みたものです。質が悪いのは普段の私は全く自覚がないことでした。スーパー側はこれまでの損害額も併せて高額の違約金を請求したわけですね。


おしまい

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不穏な来訪者 アマリエ @kiyohaha

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