悪役貴族は【続編知識】チートで生き残る!〜続編最強のラスボス少女は、俺の忠実なメイドになりました〜
渡良瀬遊
第1話 悪役貴族は助かりたい
――半年後、俺は魔法属性を得られず、父に屋敷を追放される。その後、闇堕ちして勇者に殺される――。
「あ…………」
純白のクロスがひかれた食卓で、父との夕食中だった。
身に覚えのない記憶が頭の中にあふれ、フォークを皿に落としてしまう。
「どうした? ジーク?」
「あ……、いえ……」
テーブルの目の前には、父が座っている。
威厳のある顔立ちに、立派な服装。いかにも悪役貴族の父といった印象である。
「訓練で疲れたか? それにしても、お前の剣技も上達したな。半年後の【精霊の儀】を経て魔法が使えるようになれば、さらに上を目指せるぞ」
「は、はい……父上。代々【魔法剣士】であるロートシュベルト家の名に恥じぬよう、必ずや、強力な精霊と契約してみせま……しょう……」
そう取り
「む、様子が変だぞ、ジーク」
「昼間の訓練で疲れてしまったようです……。申し訳ありませんが、少し休ませてください」
食事を手早く済ませ、父上に非礼を
身に覚えのない記憶はまだまだ増える。この世界に来る前は毎日夜遅くまで働いていただとか、ゲームだけが友だちだったとか……。
――これは、まさか……。
自室の鏡を見ると、そこにはゲーム画面で見たことのある顔が写っていた。
黒髪、赤い目をしたイケメン。
何周もプレイした大好きなゲームだ、間違いようがない。
――ジーク・フォン・ロートシュベルト。
名作RPG『ルミナス・テイルズ』に登場する悪役貴族であり、ストーリー上、必ず勇者に討伐されるゲーム後半の中ボス。
信じられないが、俺はそいつに転生してしまったらしい……。
「最悪だ……」
ぺたぺたと顔をさわり、現実感を確かめる。
ラノベでよく見る展開だが、まさかこの身に起こるとは……。
しかも。
(よりにもよってジークかよ……)
もっとも避けたかった転生先である。
なんてったって、ジーク……いや、ロートシュベルト家の人間には特大の破滅フラグがふたつもあるのだ。
まずひとつが、この俺の闇堕ちである。
『ルミナス・テイルズ』の世界には、16歳になったときに魔法属性が授けられる【精霊の儀】という儀式がある。
その儀式において、俺は何の魔法属性も得ることができないのだ。
父は激怒する。【魔法剣士】の武力をもって辺境を切り
そうして、弟のヨハンがロートシュベルト家の次期当主となり、俺は領内のド田舎・ルスト村に「領主代理」として
「……そして、【暗黒魔法】の才能と引き換えに魔族に洗脳され、ロートシュベルト領を支配下におき戦争を
ろくでもない末路である。
だが、問題はそれだけではない。
続編にも特大の爆弾がある。
『ルミナス・テイルズⅡ』では、旧ロートシュベルト領一帯が、続編ラスボスのハーフエルフ美女・タニアの極大魔法で
この世界ではハーフエルフが差別されており、タニアも奴隷として拷問まがいの扱いを受けていた。
ある日、タニアは、街を救った勇者が自分のことは助けてくれなかったと知り、絶望のあまり破壊の魔力に目覚めて――。
「……うぐ、完全に詰んでるじゃねーか……」
強くなって、俺を洗脳する魔族や敵対する勇者を迎え撃つ?
いや――仮にそれができたとして、いずれ領地そのものが続編ラスボスに消し飛ばされてしまうんだ。意味はない。
魔族を倒したあと、タニアを奴隷にしている人間を探す? 設定資料集にも書いてなかった対象を、広い領地から見つけ出すことはできるのか?
国外に逃げればよいのかもしれないが、国王陛下から任せられた領地を貴族が放棄するのは重罪だ。俺も一応は長男、領地の外に逃げおおせたとしてまともな人生が送れるとは思えない……。
「なんだよ、これ……。第2の人生なのに、お先まっくらかよ……。第1の人生だって友だちもいなかったのに……」
どうしたらよいかと悩んでいると。
――コンコン。
部屋の扉がノックされた。
「――入れ」
貴族として
すると、白髪の男性が入ってきた。俺のボディガード兼執事のセバスである。
「ジーク様、体調はいかがですか?」
「心配ない。疲れただけだ」
「それならばよろしいのですが――。今夜は
「そんなものは迷信――ん、月蝕? セバス、今日は何年の何月何日だ?」
「精霊暦1720年、5月1日にございます」
「1720年……!」
ついてる!!!
転生前、俺はⅡのラスボス・タニアの大ファンだった。差別され
――ゆえに、ラスボス戦前の細かいセリフまで暗記している。
『――1720年の月蝕の夜、ノイエルの花畑にいたわたしは、ならず者に
――まだ間に合う。
ゲーム本編では、続編ラストになるまで明かされなかった情報であるが、『ルミナス』シリーズをやり込んだ俺にとっては既知の情報。
方針は決まった。
「原作ゲーム知識を使って、生き延びる……! それも続編知識をふんだんに使って!!」
タニアを助ける。
ノイエルの森の花畑だ。
野盗程度、今の俺でもなんとかなる。
「ジーク様? いったい何を……?」
「クク……。セバス――貴様にはわかるまいが、俺には未来が見えた」
セバスは原作Ⅰだけのキャラだからね。闇落ちした俺に殺される運命だし。わかるはずもない。
「――何も言わず馬車を用意しろ。可能な限り速やかに。これは命令だ。ロートシュベルト家の存亡に関わる一大事なのだ」
「はっ……。では、このわたくしめも守り手として同行させていただきたく……」
「願ってもない。さあ、行くぞ!! 時間は限られている!!」
そうして俺は、父の了解を得ることもなく、ノイエルの森へ馬車を走らせた。
――20年後に世界を滅ぼそうとする少女を救うために。
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