第3話 元騎士団長
草原にぽつんとそびえ立つその塔は、ひときわ異彩を放っている。目立つところなのに、すべてを拒絶するかのような気配がした。
捨てられた廃材などを建材として、ただの廃墟砦が巨大な塔となっていると聞いたことがあったが。
迫力が、想像を超えている。ここまで、巨大な塔だったとは。
「待てコラ! 【バーストフレア】!」
冒険者パーティの魔法使いが、俺に向けてオレンジ色の火球を投げつけた。
「シュ!」
俺は乗っている角を足で操作して、火球を打ち返す。
「うわあああ!」
跳ね返った火球が、冒険者どもの足元に着弾した。
さて、アクータ塔に入ったぞ。
「待てよ! ほんとに、ここに逃げおおせると思ってるのか?」
冒険者に呼び止められて、俺は振り返る。
その冒険者共の顔は、哀れみに満ちていた。
「だったらなんだってんだ」
「生きて帰れねえぞ!」
「上等だよ。やれるもんなら、やってみろってんだ!」
俺はそっぽを向き、アクータの塔へ足を踏み入れる。
冒険者は、追ってこない。というか、ビビって足が動かないようだ。それほどの、ダンジョンだってのか?
アクータの塔は、高層都市と呼ぶに近い。
塔のあちこちに店があり、物々交換でやり取りをしている。
金も回っているようだが、あまり使い道はないと思っていたほうがよさそうだ。
ここで、俺はやっていけるのか?
「おい、そこのお前。待て」
一人の女性が、俺を呼び止めた。
「ん……お前は、ブレンダ!?」
小国コギレインの、騎士団長様ではないか。
コギレイン王国は、勇者やエラス帝国と同盟を結んでいる。
「まさかこんな所で、魔王軍四天王の一人と対峙できるとはな。シモン・セルバンデス」
ブレンダの手は、今にも背中の剣に触れようとしていた。
「もう俺は、魔王軍ではないんだ」
警戒を解いてもらうため、俺は角型の槍をしまう。
「そうか。実はワタシも、騎士団長の座を捨てた」
「マジかよ?」
「ああ。引退した。今は個人的に、ヒナ王女のお側についていたいと思っている。彼女の理想は、気に入った」
「人と魔族の共存が、か?」
「ああ。ここはならず者たちの集まりとウワサされているが、それなりに信頼をし合っている。住めば都とは、よく言ったものだな」
コギレインに絶対の忠誠を誓っていたはずのブレンダが、えらい変わりようだ。
そこまで信頼を寄せている、相手なのか。ヒナという女性は。
「すぐに武装解除したな。俺を警戒しないのか?」
「わかるさ。張り紙を見たんだろ?」
「ああ、これか」
俺は、張り紙を見せる。
「第一テストは、ひとまず合格だな。では」
ブレンダが、背中の剣にてをかけた。
「第二テストと行こう」
結局、戦うのかよ!?
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