序章

第一話 お嬢の微笑

「ひっ、悪かった!悪かったよ!!オレたちが間違ってた!!」


怯える男をじっと見下ろす。

涙と鼻水で汚された顔は、潰れた蛙よりも酷かった。


醜いものだ。


「お嬢、どうしますか?」


まだ若い男が私の判断を仰ぐ。

チラリと見ると、男ーー今回の案件での直属の部下であるーーは体をピクッと固くし、僅かにかいていた汗を頬骨に沿って流した。

ため息を吐きたいのを我慢する。

どうしてそんなに怖がるのか。


こんなことのために時間を割いているのが酷く馬鹿らしかった。

 

どうもしないよ。

と言いたいが、そうもいかない。

瞬きを一度し、意識を切り替える。



「うちのシマで勝手な真似をしたんだ、それ相応の罰を与えるのは当然だろう?」



醜い男に見せつけるように、私は艶やかに笑った。

男は怯え、絶望に目を染める。


その様子に部下が恐怖したことに気づいていたが、私は笑みを深めた。



私は、”お嬢”ーー霧宮凛月きりみやりつなのだから。




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