Misconception (旧タイトル天使とお姫様)

王鳥

プロローグ


夢を見た。


まだ幼かった頃の、遠い記憶の中の夢。


彼女は笑っていた。

太陽の下で風に髪を遊ばせて、幸せそうに笑っていた。


年相応の、その無邪気な笑顔にふいに涙がにじむ。


もう会うことも言葉をかわすこともできない彼女。


こうしてまた彼女に会わせてくれたのは、

神様がくれた私へのご褒美なのかな──なんて思った。


私にしたいことなんてない。

未来への希望は、いつのまにか失っていた。

将来の夢なんてものは、とっくの昔に捨て去った。

神様にした願いも祈りも、届くことはなかった。



けどさ。



「ーーの願いは叶えてあげたいんだ。」



彼女の願いは私が代わりに果たしていく。



だから、──そのために、私は生きるよ。



ふと思う。

それがわかっていて、彼女はこんな願いを残したのだろうか。

もしそうなら、私はまんまと嵌められたわけだ。



幼い子ども特有の、高く小さな笑い声がその答えだろう。




そして、夢は静かに終わりを迎えた。












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