エピローグ 揺れる影の先に ― 消えない灯り
揺れる影の先に、愛か罪か、答えはまだない。
週明けの朝。
空は淡く曇り、風は夏の残り香を押し流すように冷たい。
制服の袖を整え、玄関の扉に手をかける。
閉じる直前、ふと振り返った。
リビングの灯りの下、真紀さんがカウンターに手を添えて立っていた。
見送るでもなく、ただそこにいる。
それだけで、昨夜の抱擁の重みが蘇る。
──名前をつけられない熱。
──背中に刻まれた記憶。
その残り火が、私の一歩を重くし、同時に支えた。
◇
通学路は、いつもの朝と変わらない。
ざわめき、雑踏、制服の群れ。
けれど私はひとりだけ、別の速さで歩いている気がする。
鞄の中には、彼女が詰めてくれた弁当。
ほんの少し米粒が乱れていた仕草を思い出すだけで、胸が熱を帯びた。
信号待ち。
スマホを開く。
〈おかえりなさい〉
一行だけ打って、指が止まる。
画面を消しても、熱は消えなかった。
◇
夜。
秋の虫が鳴く。
布団に横たわると、あの夜の囁きが甦る。
──好きよ。
──線を、忘れないで。
唇の柔らかさ。
指先に絡んだ温度。
罪の名を呼んだ夜は、もう戻らない。
けれど、私の中で今も続いている。
「……好き」
誰にも届かないのに、確かに届く言葉。
やがて瞼が重くなり、静かな眠りが近づく。
その狭間で、まだ見ぬ景色を思い描く。
──もし線を越える日が来るなら。
それは崩壊ではなく、希望と呼べる瞬間であってほしい。
たとえ世界が許さなくても。
胸の奥で灯りが小さく揺れる。
風に消えそうで、それでも消えない灯り。
その光を抱きしめながら、私は眠りへと沈んでいった。
────────────────────
【あとがき】
ここまで読んでいただきありがとうございます。
義母と娘――家族という最も近しい関係の中に潜む「禁断」を描きたいと思い、この物語を書き進めてきました。
背徳でありながらも、そこには確かに「愛」があり、罪と救いの境界を揺れ動く姿をどうしても形にしたかったのです。
この作品は、単なる官能や背徳だけではなく、
「誰かを愛してしまうことの痛みと幸福」
「境界線を越えるときの怖さと救い」
――その狭間を描いた物語です。
もし少しでも心に残る瞬間や、胸をざわつかせる場面があったなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。
感想やレビューをいただけると、次の物語を紡ぐ大きな力になります。
どうぞ、これからも見守っていただけたら幸いです。
感想・ブクマ・♡を押していただけると、とても励みになります。
【共通タグ】
禁断/背徳/百合/依存/秘密/官能ロマンス
【話別タグ】
エピローグ/揺れる影/未来への余韻
凪野ゆう
女子高生の私と義母 ― 愛と罪の狭間で ― 凪野 ゆう @You_Nagino
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます