第32話 討伐任務を終えて

夕陽が沈み、空が群青に染まるころ。

俺たちは巨大カニの討伐を終え、岩礁地の近くで小さな焚き火を囲んでいた。

焦げた草の匂いと、パチパチと弾ける音が心地よく響いている。


「ふふふ、今日もあーしのアイテム合成が大活躍だったね!」

腰を下ろしたミナが胸を張り、得意げに笑う。

「巨大カニの甲羅があんなに硬いとは思いませんでした」

セレナが小首を傾げながら呟くと、ミナは得意満面で指を鳴らした。

「本来はスペシャルグレネードの出番なんだけど、ハヤトに美味しいところを持ってかれたからお披露目はまだ今度ね!」


「にしても、ミナは色々なアイテムを作るよね」

フィオラが口元を緩め、焚き火越しに笑う。

「へへ、なんと言っても私のレシピ数は圧巻の千超えだからね!」

「それは、盛りすぎだろ……」

「ひゃ、百はあるし!!」

「ふふふ」

セレナが俺とミナのやり取りを見てクスッと笑い、ミナが必死に弁解している。

このやり取りに、フィオラも微笑ましく見ていた。


——こうして笑い合う時間は、いつぶりだろうか。


やがて火が落ち着き、温かな光が四人の顔を柔らかく照らす。

ミナは手の中の金属パーツを弄びながら、ポツリと呟いた。

「……私は一人で作業している方が気楽で好きなんだけど、こういうのもアリだね」

「気持ちはわかるよ」

俺が同意すると、ミナは焚き火を見つめたまま肩をすくめる。

「でしょ? 誰とでもというわけでなく、心から許せる存在というか、なんというか……」

「中々、信頼出来る人間には出会えないからな。どの世界でも」

その言葉にセレナが反応する。

「王宮の場合は、色々な思惑が交差するから、それを見抜く術を父上から教わりました」

「じゃあじゃあ、セレナにとってミナはどうなの?」

ミナがセレナにぐいぐい迫る。


「……秘密です!」

「えー!!」

俺とフィオラは二人のやり取りを見ながら、つい笑ってしまった。

「ミナとセレナ、良いコンビだな」

「そうですね。見てて微笑ましいです」

俺は頬を掻きながら笑い、焚き火に枝を投げ入れた。


やがて夜風が吹き抜け、火の粉が空へ舞う。

遠くでは、島の灯台から微かな光が瞬いた。


「そろそろ、今日はお開きにするか」

焚き火を片付け、それぞれの寝床へ分かれていった。


俺は夜風を浴びたいので、海岸沿いの岩礁に座って物思いに更けていた。

「色々なことがあったな……」

異世界に来てから今までのことを懐古していると、突然の俺の周囲に光の粒子が発生した。

忘れもしない、あの時の風景がフラッシュバックする。


この世界に召喚された、あの情景を——

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