第6話 冒険者ギルド
街の大通りを抜けると、石造りの重厚な二階建ての建物が姿を現した。入り口の上には大きく「冒険者ギルド」の文字。
扉を押し開けた瞬間、ざわめきと鉄の匂い、獣脂の混じった空気が一気に押し寄せてくる。
広いホールには冒険者たちの声が飛び交い、奥のカウンター前には依頼を待つ列ができていた。壁には羊皮紙の依頼書や、手配モンスターの似顔絵がびっしりと貼られ、熱気でむせ返りそうだ。
「新規登録の方はこちらへどうぞ」
声を掛けてきたのは、赤髪の受付嬢。にこやかな笑顔を浮かべながら、小さな水晶玉を差し出す。
「登録のため、身分証を提示願います。詳細なステータスは水晶に触れて確認します」
受付嬢が慣れた手つきで、差し出した身分証を機器に通す。
だが表示を見た瞬間、赤髪の受付嬢の表情が固まった。
「に、二属性持ち!? 失礼ですが、もう一度水晶に触れてください」
周囲のざわめきがわずかに収まり、いくつかの視線がこちらに集まる。俺は気にせず水晶に手をかざした。淡い光が走り、俺の情報が空中に浮かび上がる。
「……やはり相違ありません。二属性持ちの方は希少なのですよ」
受付嬢は感嘆を漏らし、すぐに笑みを戻す。そして、棚から依頼書を取り出し、目の前に広げた。
「では、初心者向けの依頼から始めましょう。こちらの”薬草採集”です」
依頼内容は近くの草原に自生する薬草を十束集めること(十束以上でも可)。簡潔だが、初めての依頼としては十分だ。
「採集依頼は期限がありませんので、ご自分のペースでどうぞ。草原には弱い魔物が多く、実戦経験を積むにも最適です。模擬戦の感覚で挑めば問題ありません」
受付嬢が励ますように微笑む。俺は依頼書を受け取り、足早にギルド施設を後にした。
「あの方が……メイリさんが仰っていた、次の勇者。楽しみですわ」
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