第2話 戦略会議——勇者敗北の理由

——某所。

机に積み上がった書類と無機質に光るモニターを囲み、四人の男女が会議を行なっていた。


「前回の勇者パーティー、敗因はなんだと思う?」

「やる気の問題じゃない? 半年で二百の戦闘データはマジ少なすぎっしょ」

「直前の戦闘データはとても興味深かったが、それ以外は凡庸だな」

「改善は重ねているが、人間は意図通りに動かない。分からないことだらけだ」

「そこで登場するのが我らが近未来型AI、モッピー君じゃない?」


司会役の男が端末にデータを入力。

即座に解析が始まり数分後に結果が出力され、モニターに浮かび上がる。

<原因ハ以下ノ二点>

①パーティー結成から始動までの期間が長すぎる(三週間)

②戦闘データ収集への動機付けが弱い(終盤の収集数が少ない)


「なるほど、核心を突いてきたな」

「三週間は・・確かに遅いわね」

「”世界を救え”なんていう凡庸なワードは動機付けとしては弱いのだろう」

「継続的な動機付けなんて無理ゲーじゃん。あーしらの権限、そこまで強くないっしょ?」

「我々は兵器設計の一部門だ。他に回したところで大して結果は変わらん」


進行役の男がため息を吐いた瞬間ーーモッピー君が突然反応を示した。


<適任ナ候補者ヲ人間界ニテ発見シマシタ>


「詳細を」

大型モニターに候補者情報が映し出される。


「妹を失った喪失感・・・これは強烈だな。利用価値は高い」

「シスコン? あーしはちょっと引くわ。でも、データ取れるならいっか」

「妹のクローン提供を餌にすれば釣れる。強い喪失は、強い推進力を生んでくれる」

「でも、精巧なクローン生成のノウハウはないわよ?」

「物はいいようだ、技術転用が出来ると言っておけば大丈夫だろう」


短い沈黙の後、四人は頷き合う。


「対象を確定した。——召喚を開始する」


儀式の光が走り、画面が白く染まった。

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