第9話 畑のお手伝い

 ある日のこと。

 村の畑仕事を手伝ってほしいと頼まれた。

 大きな荷物を運ぶのは得意じゃないけれど、断る理由もない。


「よし、やってみようか、ミオ」

「ムキュッ!」


 胸元から飛び出したミオは、ぷるんと地面に着地する。

 その姿を見た農家のおじさんは首をかしげた。


「……スライムにできるのかねぇ」


 たしかにそう思われても仕方ない。

 でもミオは小さな体をぷるぷる震わせ、目の前の大きなかごを持ち上げ――

 ずるずると引きずりはじめた。


「えっ……」

「お、おぉ……!」


 思わず声が漏れる。

 小さな体で必死に、でも楽しそうに「ムキュッ、ムキュッ」と鳴きながら荷物を運んでいく。


 やがて、僕の方を見上げて。


「さと、……くん!」


 区切れた声。

 ぎこちないけど、確かに僕を呼んでくれている。


「……ありがとう、ミオ。よくがんばったな」


 撫でると、ミオは得意げに体をぷるぷるさせる。

 農家のおじさんも大笑いしながら拍手をした。


「こりゃすごい! スライムなのに立派な働き者だ!」


 ミオは照れたように「ムキュ〜」と鳴き、僕の膝に飛び乗ってくる。

 その仕草があまりに健気で、胸がじんわりと熱くなった。

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