第4話 仲間と冒険者たち

 翌日。

 僕とミオは、村の紹介で小さな冒険者ギルドを訪れることになった。

 ここで依頼を受ければ、食料や寝床を確保できるという。


 木造の扉を押すと、中では数人の冒険者たちが酒をあおっていた。

 鎧や剣を身につけた逞しい人たちに、一気に場の空気が重くなる。


「なんだガキか。……それに連れてんのは、スライム?」

「おいおい、スライムなんてペットにもならねぇぞ」


 嘲るような笑い声。

 僕は言い返そうとして、言葉が喉で止まった。

 確かに、ゲームや物語ではスライムは最弱モンスターだ。

 だけど、僕にはミオがどれだけ特別か知っている。


 そのとき、胸元のミオが「ムキュッ!」と小さく鳴いた。

 僕の頬にぴと、とくっつき、まるで「気にしないで」と言うように。


 ……健気すぎて、胸が締めつけられる。


「おい、テイマー気取りか?」

「ガキの遊びにしか見えねぇな」


 冒険者たちは笑いながら去っていった。

 ギルドの受付の女性だけが、困ったように僕に笑いかけてくれる。


「気にしないでください。あの人たち、口は悪いですけど根は悪くないんです」

「……はい」


 でも、胸の奥に小さな棘が残った。

 僕はこの世界で何者でもない。居場所だってない。

 唯一の支えが――ミオだけなんだ。


 僕は小さく息を吸い込み、ミオを撫でた。

「……大丈夫。僕は君がいてくれるだけで、十分だから」

「ムキュ!」


 ミオは元気よく鳴き、僕の胸に飛び込んできた。

 その温もりが、何よりも心を強くしてくれた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る