嘘
佐々木
第1話
「ねえ、私のこと、愛してる?」
深夜、河川敷を歩いていると、隣で彼女がそう尋ねてきた。
「世界で一番愛してるよ」
「……なんか嘘くさいね」
「本当だよ」
「じゃあ、証明してよ」
僕は少し考えてから、スマホでlineを開いて、メッセージの履歴を彼女に見せてみる。
「そういうのじゃなくてさ」
「じゃあ君のうんこ食べるよ」
「そういうのじゃなくてさ!」
「じゃあどうすればいいのさ」
彼女は数舜押し黙って、それから、試すように言った。
「私のために死ねる?」
「死ねるよ」
「今すぐに?」
「うん」
「じゃあ死んで」
彼女は、冷たい声でそう言った。
「分かったよ」
僕はなんだか、死んでしまってもいいような気がした。
横を流れる川に体を向けて、足を踏み出す。
「やっぱ死ななくていいよ」
彼女が、僕の腕を掴んだ。
「じゃあ、どうやって証明すればいい?」
僕は分からなくなって、そう尋ねた。
それからまた、数舜の沈黙。
僕は黙って、彼女の答えを待った。
「……何も言わずに死なないでね」
ようやくそう言った彼女の表情は、暗くてよく見えない。
それから僕たちは、手を繋いで歩いた。
流れる水の音だけが響いていた。
嘘 佐々木 @suburisoburi
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