時空を越える乙女たち

「911くんって誰ですの? そんなの居ませんでしたわよ?」


 前から気にはなっていた。ミーとハーの間でも、このゲーム世界の知識に微妙な不一致がある事に。

 コバトの知っているこの世界のゲームには、911は居ないという。


「あー、ワシのやったのは平成初期のパソコン版なんじゃけど、18禁の」

「まあ! なんですのそれ! 遊んでみたいですわ!」

「海外版ならWindows版があったと思うよ。この世界には無いと思うけど」


 あったとしても、18禁なら、私達ダメでしょ。

 中身はともかく、ガワは15歳なんだから。

 まあ、それはともかく。


 ハーの遊んでいた乙女ゲームは、平成初期のパソコン版。

 ミーが読み込んだ設定資料集は、2000年発売の家庭用ゲーム機版。

 コバトが病室で遊んだのは、令和の携帯ゲーム機版。


 9月11日に合衆国でテロが発生したのは、2001年。それ以降は、911君は、乙女ゲームから消えたのだ。テロを連想させちゃうからでしょうね。私は、ドイツのスポーツカーだと思ったけど。


「117と177の双子なら居ますわ!」

「ゲーム作った奴、キャラの名前で大喜利しちょんなぁ」


 ちなみに、令和には117の時報サービスも、177の天気予報サービスも存在しないそうだ。コバトは、どちらも知らなかった。

 まじかー。昭和の頃は何でも電話したもんだけどなー。映画の上映時間も、電話かけて調べたんだよ? 今は、スマホでチケット購入まで出来るけど。


「少なくとも3種類はあるワケね? もっとかしら?」

「海外版とか、アニメ版も入れたら、かなりになるね」

「マンガ版もありますわ!読んでませんけど」


 マンガ版は誰も読んでなかった。どうやら、ゲームやアニメをコミカライズする事の多い作家なのだそうだけど、オリジナルの世界を崩壊させる特殊な作風なのだとか。怪奇植物とか怪獣は、マンガ版のネタなのかもね?


「つまり、この世界は、どのバージョンなのか分からない?」

「うーん、ごちゃ混ぜみたいじゃね?」


 であれば、子分達のゲーム知識が役に立たないワケではないね?

 でも、いわゆる無双ってやつは無理なんでしょうね。


「まあ、今更かしらね? どうであれ、ゲームなんでしょ? 攻略法はあるって事よ」


 何を攻略するのか、分からなくなってきたけどね!

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