探偵賛歌のモノグラム

新愛ルーナ

序章『モノグラム』

『江戸川・妃鳫ひがん・ポーラ』は嘆息した。白銀のツインテールをゆらゆら垂らし、右目の紅を疲労でくすませながら。すなわち、またこうなった、と。


 東京都在住、一六歳。現役のロリィタ好きぴちぴち女子高生。チャームポイントは左目の眼帯。そして、天涯孤独。たしかに、少し数奇な人生を辿ってきたかもしれない。だからって、これはない。このごろ、ポーラの豊かな胸の奥を悩ませるのは、そればかりだ。


「だ、だからどうだって言うんだよ! そんな馬鹿みてぇな真似を、ホントにやったとでも!?」

「そうだわよ。あなたがやったんだ。でしょう? その指輪の擦り傷が、何よりの証拠だ」

「ふざけんな!」


 ポーラの眼前で憤慨極まるとばかりに怒声を響かせるのは、三〇代後半の男。中肉中背、ある程度手入れされた口髭。名は『布里ふり 志摩助しますけ』。

 今回の殺人事件の、犯人である。ポーラのピンクのワンピースを彩る無数のフリルが、その剣幕に圧されるように少し揺れた。


「その指輪の内側に刻み込まれた幾重もの擦り傷は、あなたに指輪を外す習慣があることを示している。犯行推定時刻のアリバイを証言しているのは、そこで服の袖をガジガジやってる、少々化粧の濃い、カサカサのパツキンがステキなレディだけ。殺された奥さんには生命保険がかかっていた。……なんでも、この数か月、やけに羽振りがよくなったんだって?」

「た、たまたま趣味の投資が上手くいったんだよ!」

「投資用の口座も作ってないのに? これは驚いた、闇市場での取引も行っていた可能性が出てきたわけね。余罪がたくさんでハッピーなことだわね」

「だまれ! ……そうだよ、生命保険が入ったから、嫁の亡くなった悲しみでヤケになって遊びに使っちまったんだよ」

「なるほど」


 じつにくだらない。投資が上手くいった、などと見え透いた嘘を吐く理由も謎だが、彼の言うことを真に受けるのなら、彼は奥さんの亡くなった翌日に二人乗りのマイボートを買ったことになる。奥さんの幽霊を連れて旅に出たかったとでも言うのだろうか?

 まったくナンセンスだ。


「つまり、件のご立派なボートでそこの彼女と沖合ランデブーを楽しんでいたのは、たまたま浜辺で出会ったところ意気投合して、船内で恋愛関係に発展したのだと?」

「そ、それは……」


 押収されたボートのなかには、明らかに『自由恋愛』を楽しむことを目的とした、ちょっと言葉にはしたくないグッズ、備品の数々がエキゾチックにコーディネートされていた。つまりは、明らかに男女二人で乗って楽しむための内装だったということだ。そう、奥さんの亡くなった翌日に、この男はそんなものを発注したのである。


 もはや考えるまでもない。明らかに、志摩助はこのクサ……イランイランの香りがとても素敵な彼女と不倫関係にあったのだ。指輪をよく外すのは、つまりそれだけ彼女との逢瀬を重ねていたということだろう。奥さんが本当に可哀そうだ。こんな男にもきっと、少し……ほんの少しは良いところがあって、それを信じて結婚生活を送ってきたのだろうに。


 しかし志摩助は、その裏でとんでもない不誠実を働いていたわけだ。悲しい現実である。


 ともかく。


「あなたがやった、少なくとも動機があり、実行することができたことは、もはや言うまでもない。意味のない弁解をするよりも、おとなしくお縄について弁護士さんの選定を急いだほうが理に適っているのではなくて?」

「クソ……くそっ!」

「信じられないわ! まさかあんたが、こんなことをする人だったなんて!」

「あー、ちなみにおば……愛人さん。あなたにも共謀共同正犯の疑いがあるので、仲良く捕まるように」

「えっ」

「え、じゃないわよ」


 まったく白々しい。今回のやけに凝った犯行の実行を考えれば、協力者がいるのは間違いない。その上、現場ではやたら甘ったるい香りが残留しており、警察犬がいまもしきりに彼女に向かって吼えている。

 関与した証拠を探すのはこれから警察がやるべき仕事だが、男の犯行推定時刻のアリバイを証言しているのが彼女だけというのもあり、重要参考人であることは間違いない。


 というわけで、ポーラの役割はここまでだ。仕事は終わった、と彼らから目を逸らすと、気のいい笑顔で警察帽を軽く下げる青年。このところよくあう、新米警察官の『かい 正義まさよし』だ。


 少し長めの黒髪はペタリと七三分けに輝き、髭はすべて処理されている。志摩助とは大違いの、清潔感溢れる好青年である。


「いやあ、今回も助かったっすよ。ポーラさん。『彼岸の魔女』の名は伊達じゃないですね」

「あの、その不吉な二つ名、せめてもうちょっとマシなものにしてくれませんか。おかげで会う人会う人、彼岸だ魔女だって、これもう普通に誹謗中傷なんですけど」

「しかし、最近の犯罪者はやけに手間のかかった犯行をするっすよね。おかげで、こっちは毎度、頭が爆発しそうですよ」

「完全犯罪。それを目指す心理がわからないわけではないけれど、ここのところ妙なトリック仕立ての犯罪が多いのはたしかだわね」


 そう、トリックだ。とあるひとりの天才教授の手によって、この世に『推理』という概念が発明、体系化されてから十数年。それに比例するように、世界各国では、妙に凝った手法の犯罪が激増していた。


「しかし、いつものことながら、本当に鮮やかな推理でした。一般人の集められる程度の情報から、ここまで正確に犯行の計画を解き明かしてしまうなんて!」

「うん、まあ、簡単だったわよ――」


 事件の発端は、志摩助の不倫が、奥さんにバレてしまったことだ。不用心にもスマホをダイニングに置きっぱなしにしていたところ、愛人からの粘っこいラブコールが快活と鳴り響き、思わずスマートフォンの画面を覗いた奥さんが、通知欄に映った決定的なメッセージを目にしてしまったのだ。


 志摩助は、慌てて誤魔化しながら、すぐに別れる、気の迷いだったなどと一旦その場をおさめ、あろうことか、愛人に関係解消の連絡をするのではなく、生命保険ももらえて一石二鳥かも! なんて愚かな殺害計画を企て始めたのである。


「短絡的な動機の割に、計画だけは巧妙っしたね」

「そうだわねぇ……」


 奥さんがナイフで首を切り裂かれ、ベッドで死亡した時刻、ふたりは都内のアミューズメント施設でバドミントンを楽しんでいたという。

 ただし、平日の真っ昼間であったことから、目撃者は少なく、また施設の入退場管理がすべて無人化されていたこともあって、ほんとうにふたりが、その日その場所で戯れていたのかを証明できるのは、監視カメラに記録された映像と、本人たちの証言だけだった。


 ふたりが愛人関係であることは、調査の過程で自明であったこと、現場から採取できた指紋が奥さん本人と志摩助のもののみであったことから、警察は志摩助を殺人の容疑者と踏んで、また同時に愛人女性を共犯の疑いありとして証拠集めに勤しんだ。


 しかし、ここで大きな問題が起こった。施設の監視カメラには、事件当日の六月七日、ほんとうにふたりが遊んでいる姿が映っていたのである。これで捜査は振り出し、犯人は別にいるということになり――かけた。


 そこで待ったをかけたのが、このポーラである。以前から、時折奇妙な事件の解決に協力していたポーラの提言は、比較的すんなりと警察に通った。


 つまり、あの監視カメラの映像は、トリックである、と。


「まさか、カメラのレコードメモリが、差し替えられていたとは……ホント、目からウロコでしたよ。どうして気付いたんですか?」

「指輪よ。じつは、たまたまオークションサイトで中古ジュエリーを見ている時に、この指輪を見つけてね」


 コロコロ、と手の中で転がした、『もうひとつの指輪』は、これまた志摩助のモノだ。おそらくは、愛人とのペアリング。


 愛人との関係を隠蔽するためであろう、志摩助が売りに出したこの指輪を、ポーラは買ったのである。取引は問題なく成立し、これが手元に届いたのは、そう、六月三日。事件の四日前である。これが彼本人の指輪であることは、取引の最中のやり取りと、発送元住所の他、警察の開示請求による情報で確定済み。


 正義に見せてもらったカメラの映像のなかの志摩助の手には、もうポーラのもとへ発送されたはずの指輪が、はっきりと映っていた。それは、映像が当日のものであれば、映るはずのないモノだったのだ。


「ゆえに、カメラに何らかの作為が加えられたのは明らか。施設に行って確認したところ、最近辞めた女性スタッフがいるという。元スタッフであれば、閉館後に店内に忍び込み、カメラに細工を施すのはそう不可能な話でもない。あとはそのスタッフが、志摩助の愛人のソイツであると証明すればいいだけ。甘ったるい香水と、元気に毎日SNSへ投稿してくれる自撮りのおかげで、特定は容易だったわ」

「はい、ポーラさんの言う通り、彼女は間違いなく施設の元スタッフであり、そして事件前日の深夜、何者かがカメラのメモリを入れ替えた痕跡があったようっす。……ああ、でもそういえば、話を聞いたスタッフの人は、ポーラさんにそんな話を聞かれたような覚えはないそうでしたが……」

「い、いや、えっと、それはその、ほら、もちろん変装した上で、悟られないようにさりげなく聞き出したからよ」

「なるほど! 彼岸の魔女たるもの、ただ推理が出来ればいいわけではないってことっすね!」

「う、うん、そうよ。そんな感じ……」


 嘘である。実際には施設に確認になんか行っていないし、指輪を買ったのも偶然ではなく意図的に探して競り落としたのだ。

 まさにこんな風に、正義は時折鋭い指摘を刺し込んでくる。いや、じつはもうバレているんじゃないかとポーラは何度思ったことか。つまり……。


「いやあ、なんというか。流石です! その頭脳と天運には、つくづく感服してるっすよ」

「それほどでも、あはは……」


 本当にそれほどでもない。ポーラは冷や汗を流しながら思った。わたしの頭脳なんて、精々一般人よりほんのちょっと言語野が発達しているくらいのものである、と。

 少なくとも、このような流麗な推理をスラスラと披露できるようなものでは決してない。なのに、どうして実情はそれをできているのか。


 それはつまり、ポーラは、この事件の真相を、“初めから知っていた”のである。


 カンニング、チート。色々な表現がある。ただ、もっとも簡潔に実態を形容すると、すなわち、『原作知識』である。


「『探偵』、でしたっけ? この縦横無尽の活躍ぶりからして、ポーラさんに憧れた後進が現れるのも時間の問題っすね!」


 そう、何を隠そう、それこそがポーラの頭痛の種。豊満なバストを悩まし気に揺らす問題。

 ポーラが解決してきた事件とはつまり、ポーラが昔に書いた妄想小説が現実として起こった事件、なのだ。頭がイカれてしまったのかと思うだろう。実際イカれているのかもしれない。けれどこれは、紛れもない現実なのだ。


 ポーラの心筋に莫大な負担をかけている、特級の『呪い』なのである。


 どうしてこんなことになったのか、皆目見当もつかない。あれら出来の悪い若気の至りの産物は、すべてあくまで個人の趣味として、誰に披露することもなく、ネットの海へ放流することもなく。間違いなく、激烈な羞恥心と共にゴミ箱へ放って、完全に消去されたはずなのだ。


 いったい誰が、何の目的で、こんなジョークにもならない嫌がらせ――いや、犯罪を為しているのだろう。あるいは、天文学的な確率で奇跡が連続しているだけか? それこそ論外だ。

 間違いなく、何らかの手段でポーラの消したはずの小説のデータ群を手に入れた誰かが、なにか意図をもって、この世界を混乱に陥れようとしている。


 ポーラへの個人的な恨みでやるには手間もコストもかかりすぎているし、そもそも誰かの恨みを買った覚えもない。なにせ、天涯孤独の身ゆえ、他者との交流関係がほとんどないに等しい人生を送ってきたのだから。


 ポーラの妄想を元にしたであろう事件に出くわす度、「誰が、何のために」と、やはりその疑念ばかりが頭の中をループする。

 しかし、実際に起こっているのであれば、動かなければならない。そう、不本意ながら、それら奇妙奇天烈な怪事件の生みの親であるポーラが、まず動かなければならないのだ。


 だってポーラは、答えを知っているのだから。


「これはただの雑談ですが、僕も読みましたよ、ポーラさんの小説! 帯もかっこいいっすよね。『これが世界初の、名探偵だ!』。真実を探し、うかがう者だから、探偵。すげえネーミングですよね。これぞ新時代のヒーローって感じで!」

「……うん。読んでくれたんだ。ありがとうございます」

「視点主が一般人の助手っていうのもいいっすよねぇ。だからこそ、物語に没入できる。探偵の凄さを、ありありと共感できる! 素晴らしい小説ですよ。新しいジャンルにまでなっちゃいそうな勢いで売れているみたいっすし!」

「そ、そうね。有難いことだわね」


 そう、ポーラは最近になって、『探偵小説』というものを大手出版社運営の小説コンテストへ応募し、見事受賞した。講評は、それはもうむずっかゆい誉め言葉で溢れていて、実際に現在進行形で爆発的に売れている。それ自体はとても嬉しいことなのだが、じつのところ、これは、ただ作家になりたくて書いた作品ではなかった。


 過去の妄想小説たちを元に事件を起こしている黒幕が、ポーラが新たに作品を書くことによって、なにか動きを見せないかを探りたかったのだ。

 すなわち、ポーラの生み出した『探偵』という造語には、お前たちを探し偵っているぞ、という警鐘の意が込められているわけである。どうして黒幕――暫定的に、奴らと呼ぶ。奴らがこんなことをしているのかはわからない。


 けれど、向こうがこのままこんな非道で残虐な事件を繰り返し起こすようであれば、他でもない、それら事件の真相をすべて知っているポーラが、立ち上がらなければならないのだ。


 ゆえにこれは『呪い』であり、世の中にこんな混乱を生んだ一端となってしまったポーラなりの、贖罪であった。


「やっぱり、この『探偵』はポーラさん自身がモデルだったりするんっすか?」


 近年、治安の急激な悪化に晒されているこの世界。どこの国の警察も限界が近く、善良なる無辜の人々が日々悪辣な凶悪犯罪に怯える非日常たる日常。

 誰もやらないのであれば、誰もできないのであれば。たとえカンニングありきの紛い物に過ぎなくとも、わたしがならなくてはならないのだ。ポーラはそう固く決意していた。


 この非情な世界に一筋の光を点す、ヒーロー。


「――うん。そうだわよ。わたしはね、小説のなかではなく、この世界で。この現実で、なりたいんだ」


 すなわち本当の――『名探偵』に。


「素敵な夢っすね! そういえば、ひとつだけ気になっていたことがあって」

「えぇと?」


 正義が思い出したように言ったのに、ポーラはきょとんと首を傾げた。


「ボートを確保した後、周辺から人を退避させて隔離したのはどうしてっすか? そりゃあ、証拠はもう押収し終わってますけど、ボート自体も、念のため人をやって保全させた方がよかったんじゃないっすか?」

「あっ。え、えっと、それはね」


 ポーラが説明を忘れていたと冷や汗を流しながら答えようとしたその瞬間。


 ――ドゴオオオオォンッ!


 空気をまとめて吹き飛ばしたかのような、爆発の轟音が無人の浜の方から轟いてきた。


「……こうなるからよ」


 唖然として粉々に爆砕されたボートの方を、吹きあがった海水にぴちゃぴちゃ打たれながら見つめる正義に、ポーラは努めて声を震わせないように言い放った。

 ちなみに、ポーラはしれっとお気に入りの傘を広げて、ピンクのロリィタ服が濡れないようにしていた。


「ど、どういうことっすかァッ!?」


 ポーラは、周辺の封鎖を終えたところですっかり安心してしまい、伝え忘れていたのである。すなわち。


「奴はね、犯行が発覚するのを恐れて、すべてを知っている愛人を証拠品ごと、時限爆弾でボートもろとも爆散させるつもりだったのよ!」


 びしっ、とすべて計算通りだったかのように閉じた傘を突き付けるポーラの頬には、汗が伝っている。どうだろうか。この渾身のどや顔でなんとか誤魔化せないだろうか。 


「さ……」


 正義は呆けていた顔を伏せ、プルプルと震えている。間違いない、怒っている。当たり前か。

 続く言葉は、さすがに言っておけよ、だろうか。あるいはふざけるな、だろうか。ポーラが自身のポカに戦慄していると、正義は顔をあげて叫んだ。その瞳は、妙にキラキラと輝いていた。


「――さすがっすッ! ここまですべてお見通しで、人が近づかないよう封鎖し、そして我々の安全も確保してくたんすねッ!?」

「えっ。……え、ええ! ええ、そうだわよ! この彼岸の魔女にかかれば、すべてはお見通しなのだわよ!」

「うおおぉ、すげえっす! ほんとにさすがっす! どうやってこの計画や爆発の時間を見抜いたっすか!? 後学のために教えて欲しいっす!」


 えっ。ポーラは思考停止した。彼の言葉を丸パクリしてお見通しだとは言ったものの――いや、実際すべてお見通しではあったものの、それらはすべて『原作知識』によるものである。

 ただ知っていたから、そんなことをそのまま伝えれば、共謀した疑いで当然のごとくお縄である。ゆえにポーラは、それらを推理で解明したのだと釈明しなければならない。


 しかし、そんなものを即興で用意できるわけもない。ポーラは決断した。


「す、推理よ! これはええと、なんかこう、極めて複雑な論理によってこうだと目星をつけたのだ!」


 つまり、いつも通りのゴリ押しである。言うまでもなく真っ赤な嘘であった。

 しかし、ポーラが『本物』だとミーム汚染されている正義さんや他の警官たちは、あっさりとそれを真実だと信じてくれた。

 逆にツッコまれても困るので、都合がいいと言えばいいのだが……警察はこれで大丈夫なのだろうか。


「な、なるほど! 相変わらずやべえっす! よっ、天才美少女! 世界初の名探偵! 彼岸の魔女!」

「え、えへへ?」


 それはそうとして褒められるのはうれしいので、ポーラは素直に照れておいた。こいつもとても大丈夫ではない。


「いやあ、今回もご協力ありがとうございましたっす。またなんかあったらよろしくっす!」

「そう、そうだわね。何もないのが一番なんだけど……」


 その後、自分が爆殺されそうになっていたと知った愛人の女性は、当然のごとくすべてを自供し、志摩助の罪を確定させた。死なばもろとも、というやつだろうか。ある意味お似合いのカップルである。


 ともかく。ポーラはこれでまたひとつ、世に名声を轟かせたのだ。

 だからといって、周囲に優れた人間だと勘違いされる負担ばかりは、いつまで経っても慣れそうにないのであった。


 ポーラはやはり、白銀のツインテールをふらふらと垂らし、諦観の伴った顔でひとつ、ため息を吐いた。

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