第21話 皆で買い物
朝からパラパラと降っていた雨も日が傾きかけるころには、焼けた空がところどころ顔を覗かせていた。
「さて、買い物でも出かけますか」
「さんせー」
信長とサニアが出かけ支度を始めると、シロワカがゴロゴロと喉を鳴らしながら歩み寄ってきた。
「買い物行ってみたいニャ」
「でも、二つの尾っぽ見られたらマズいでしょ?」
「ニャ……」
サニアの指摘で寂しそうに俯くシロワカに信長は屈んで二、三度撫でる。
「バレなきゃいいんだろ」
「まあ、そうだけど」
「少し遠いけどペット可のスーパーまで行こう」
「OK! たまには違うところも面白いし」
「そうと決まればってリュックサックどこにあったっけ」
押し入れを開け荷物を漁りだす。
「そこには無いよ。 ほらそっちのタンスの上」
タンスの上には確かにリュックサックがあったのだが、かなりの期間使用していなかったのでうっすらどころではないホコリが積もって下手に動かすと部屋の中がホコリまみれになりそうだった。
ガララララ
あらかじめ窓を開けておいてからホコリの立たないようリュックを慎重に運び出す。
バンバンバン
「ゴホゴホゴホ」
ホコリが激しく舞って気管に入り込むと、それを追い出そうとノドが躍動した。
「すげえホコリ」
「仕方ないじゃん、掃除しないノブが悪い」
「ホント洗濯機にかけておくんだった」
後悔先に立たず、ある程度はたいてホコリを飛ばした後に水拭きで細かい所を掃除する。
「こんなもんでいいか」
「シロワカ、この中に入って」
「うにゃ」
シロワカがリュックに入り込む。
「頭を出してごらん」
シュッと頭を出したところで、入り口のひもを軽く締める。
「よいっしょっと」
信長の前側にリュックをかけてゆっくりと立ち上がる。
「シロワカ、人間の言葉しゃべっちゃだめだからね」
サニアの忠告に頭をこくりと頷かせ周囲をキョロキョロと見回した。
「これなら、尾っぽが見えないから安心だな」
「尾っぽが見えなければ普通の白猫だからね」
「よし今度こそ出かけるぞ!」
「レッツゴー」
スーパーへ向かう道すがら、リュックから覗く猫の頭に意識を奪われるのか行き交う人たちの視線を感じる。
「メチャクチャ目立ってるね」
その声を耳に受けながらスーパーに入ってゆく。
シロワカは初めてのスーパーの買い物に周囲を何度も見回して様子を伺う。
「あはは、確かに五百年前にはこんな店無いだろうしね」
サニアがシロワカに笑いかけると、シロワカはちょっとばかり不機嫌そうな鳴き声を上げた。
「さてと、何を買うかな」
「弁当コーナー行こ?」
「まだ、あとで」
野菜コーナーで無くなっている物を補充がてら見回り、生鮮コーナーへ行くとシロワカがもぞもぞとしきりに体を動かしアピールをしだす。
「ああそっか、お魚の刺身ね」
「にゃー」
「たまには高いの買うか」
「にゃにゃ」
「高級刺身詰め合わせセット3,980円」
「うう、なかなかしんどい金額だな」
「シロワカ、この刺身の詰め合わせのどれがいい」
「にゅうー」
シロワカは目をキラキラと輝かせて一つ一つ吟味しだした。
(安いの頼むぞ)
「にゃー」
「……これか?」
(一番高い奴だ……お供え物と思えば……いや思え!)
「よしわかった、買おう」
「シロワカばっかりずるい」
「サニアのも買うから」
エイヤーっとカゴに詰め込むと、勢いで肉も牛豚何点かカゴに入れる。
その後も鮭の切り身や卵などをカゴに入れペットフードコーナーへ行く。
「こんなのどうかな」
シロワカはペットではないと言わんばかりに顔を背け返答を拒否するも、あるものが目に留まりとても興味を示した。
「にゃうん」
「なんだぁ? チャ〇チュールか」
「あっ私も興味あるぅ」
(猫か!)
確かに性格は猫みたいだなと思いつつ、チャ〇チュールを試しに数種類買ってみることにした。
「にゃー」
他に美味しそうな猫缶をいくつかカゴに入れてお菓子コーナーへ回る。
「おかしーおかしー」
サニアはふらふらと飛びながら欲しいものを見て回ると、選び出したのか何点か欲しいものを指さした。
「私はこれとこれとこれとこれが欲しい!」
「一つにしなさい」
「やだ、シロワカは高い刺身じゃん」
信長は長嘆息を吐くと、サニアが欲しがったお菓子をすべてカゴに入れた。
冷凍食品を数点カゴに入れた後に弁当コーナーに向かうと、サニアはいつもと種類の違う弁当を眺めて激しく目移りをし出した。
「シロワカ、長くなりそうだな」
「にゃーん」
「焼イカなんてあるぞ、食ってみるか?」
「にゃうーん」
シロワカが欲しいというような声を上げたことでカゴの荷物が信長の弁当と合わせて二つ増えた。
「決めた、私はコレ」
天津丼を指さしている。
軽くうなずくと、天津丼をカゴに入れレジへ向かった。
「久しぶりの万越えだな」
「にゃーん」
シロワカはクレジットカードが理解できないらしく、とても不思議そうに会計を眺めていた。
シャー――
自動ドアが開くことも不思議そうに見ているシロワカは、何だかタイムスリップしてきた子供の様でとても神様には見えなかった。
その帰り道
「ふにゃーーー」
突然シロワカが威嚇するような大きな声を出して、まわりにいる皆を驚かせた。
「どうしたんだよ、急に」
信長が言い終わるか言い終わらないかの瞬間、いつもの嫌な気配を感じ出した。
「ノブ」
「ああ」
裏道に入り、人気が無いことを確認すると荷物を小さくしてリュックに詰める。
「にゃぁー」
「冷たかったか、ゴメンな」
気配の元へ足を進める。
「この辺りだな」
ビンビンと気配を感じるのだが一向に敵が見えない。
「信長、気を付けるニャ。 敵は肉眼では姿が見えないヤツニャ」
「‼」
「来るにゃ」
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