第29話 酷いオチだ

 こんな酷いオチの物語は、映画でもドラマでも観たことがねえ。結局俺は、ラヴサカザキの半数ほどの女と関係を持ったまま、この世界で生きていくこととなった。ラヴサカザキのリーダーはナオミ。この世界では聖女リントワール。俺の妻ってことになってる。


 側室なんて言葉は俺の身分には勿体ない。愛人とでもいうべきだろうか。アンネミラ、ニア、セクラは俺にベタ惚れしていた。アンネミラとニアが俺の子を宿していたこともあって、あのあとセクラからは強引に襲われた。男性用のシャワーに押し入られてな。


 ロイエントの屋敷から助け出したペルシワ、リグネット、ヒルデフロムはお告げこそ来なかったものの、全員が妊娠していた。望まぬ相手からの妊娠には地母神もお告げを遠慮してくれるらしい。誰の子供かもわからない。なら、俺の子供ってことでいいだろ。俺だって抱いたしな。


 クランの本拠地で立て篭もっている間に抱いたハーネヴァはおっとりした背の高い元人妻で、少しだけだらしない身体。美人だが、根が内向的で流されやすい。ランチロテはリントワールと同じくプラチナブロンドだが、くせっ毛の美人。ヒモみたいな元恋人との縁を切ってやった。ギュルヴィアは南部出身の褐色肌の美人。クソみたいな妹好きの兄貴との関係を断った。レークネーもまたハーネヴァと同じタイプだが、元旦那が血縁者で縁を切るのにひと悶着あった。アンセリーナは嗜虐趣味の兄弟から玩具にされていたらしく、コッソリ埋めてきてやった。


 ともかく、ラヴサカザキの団員の内、割と性格的に問題のありそうな女は俺が全員、面倒を見てやっているわけだ。


 なんだかんだ一度は酷い目にあってやさぐれた女たちは、我儘だったり、虚言癖があったり、何かあっても自分の都合の良い事しか言わない。他の男に惚れてもすぐに出戻ってくるような女ばかりだった。そういう面倒くさい女が集まっている分、ある意味リガノの一角団よりタチが悪い。アカネは身内贔屓だと思う。


 俺自身はというと、このクランには所属していない。俺が『ラヴサカザキ』とかおかしいとナオミに反対されたからだ。ま、そこら辺は自由にさせてもらって、今から思えばよかったのかもしれない。



「よぉ、サンザ。いい儲け話でもあったか?」


 サンザはあの襲撃にも参加せず、罪も比較的軽かったようで罰金で済んだらしい。投獄されるよりはマシくらいの罰金だったらしいがな。ちなみにあの元王子は、尻に魔道具を突っ込んだままという噂を聞いた。ま、誰も男の尻のあんなもん抜きたがらないよな。


 さて、そのサンザが、仲間を集めて話し込んでいた。


「おお、ユキか! いい所に来てくれた。手を貸してくれよ、手のかかる遠征なんだ。お前もそうだが、ラヴサカザキにも手伝って欲しくてな」


 つまり、普段はこうやってラヴサカザキから離れて男連中と仲良くやっていけてる。お互い、面倒くさいマウントの取り合いもなく、いい連中だ。


「それで? 相手は何だ?」


 俺は先に受付を訪れてからサンザの元へ。受付では、ソニアが熱い視線を送ってきていた。俺は指先を軽く絡ませてから、ソニアから離れる。


「サイクロプスてのがルイビーズに現れたらしい」

「なんだそれは。目からビームでも出るのか?」


「ビーなんだって? 一つ目巨人だよ。巨人なんて死に絶えたと思ってたが、他所の国には居るもんだな」

「わかったよ、リントと相談しといてやる」


「…………そ、それとな、ユキ。ニアも面子の中に入れて欲しいんだ」


 男のクセにもじもじと、サンザが控えめに問いかけてきた。


「またかよ! 俺も怒られるんだぞ!?」

「頼むよ。忘れられないんだよ……」


「いつもみたいに話を聞くだけじゃダメなのか?」

「酒と塩を奢るからさ。お前だって子だくさんで物入りだろ?」


「わぁったよ、クズ野郎が!」


 ニアの頼みで一度、サンザにニアの寝取りを語って聞かせてやったことがあった。サンザは絶叫してうずくまり、ニアはそれを笑って踏みつけていたが、どうもそれがふたりともクセになったらしい。サンザは普段からニアとのセックスの内容を耳にしたがる上、時には見せつけプレイを望むようになった。


 さすがにそこまでやると、やり過ぎだとナオミに俺が怒られるんだが、この元夫婦たちには通じない。そうなると遠征の際にこっそり天幕でやったりするのだが、まあ、愛人の誰かしらにチクられて俺が怒られるって寸法だ。



 ◇◇◇◇◇



 さて、冒険者ギルドを出て市場へ向かうと、ラヴサカザキの面々が居た。


「重そうだな、ナオミ。持ってやろうか」

「サカザキさん! 大丈夫ですよ、このくらい」


「いいから寄こしな。俺の食べる分も入ってるんだろ?」


 そう言うと、幸せそうにはにかむナオミが荷物を寄こした。


「ユキ、あたしのも持ってよ」

「私も……お願いできます?」

「こっちもお願い!」


 そう言って女たちが次々に荷物を渡してくる。俺は近くで荷運び棒を借りて、棒に荷物を引っかけ、担ぎ上げる。


「さっすがユキ!」

「ここに来る前は荷運び人ポーターって呼ばれてたからな」


 空いた手でナオミの手を握る。ナオミには計画的に子供を作れと言ったんだが、1人目が生まれて2年、早速もう2人目がお腹に居る。


「そういえば、アカネがこっちへ戻ってくるって言ってましたよ。さっき、大賢者様のところで聞きました」

「そうか。あいつもそろそろ男ができただろうかな」


 アカネはずっと東の方の国の出身だそうだ。母親がうるさいからって逃げてきてたらしい。子供かよ。ただ実際、アカネはまだ成人もしていなかった。つまり、本当に子供だったわけだ。


「それがですね、アカネ、成人して結婚したんですって。子供が生まれたから旅行って言ってました」

「子供が生まれたから旅行ってのがよくわからんよな」

「残念だったな、ユッキー!」

「ユキ、相手が悪い男だったらアカネも寝取っちゃえば?」

「アカネ、マグロウでチョロいからね」


「そんな悪い男だらけだと世も末だぞ」

「いい女ってのは悪い男に一度は引っかかるもんなんだよ」

「それはセクラだーけー」


 聞いたところによると、この世界では10歳を過ぎるとあっという間に成長するらしい。だから、身体ばかり成長して心が追い付いていないことが多いそうだ。それもあって未だに親が結婚相手を決めたりする。まあ、それも良し悪しだな。


 そして驚いたのがその先だ。成人すると、20歳くらいからほとんど齢をとらなくなるそうだ。80くらいまでは若々しい姿のままだという。つまりだ、俺とナオミの時間はまだまだたっぷりあるってことだ。







 そうそう。エルメリはというと、西のリガノで一角団を切り盛りしているらしい。ショーンベルクを尻に敷き、団員にげきを飛ばし、結束を固めてるとか、固めてないとか。アカネも最初はエルメリを心配して俺に接触してきたそうだが、エルメリは思った以上に強い女だったってわけだ。



 『賢者サカザキ!』 へ続く






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る