第28話 最後に……

『賢者サカザキよ、どうやら無事にナオミをみつけられたようだな』


 なんだかわからない白い場所に居た。上も下もよく分からない、重さも感じない場所に。


「無事? 無事だって? これのどこが無事だ!」

『生き返ることができるんだ、無事じゃないか』


「冗談じゃねえ! どうしてナオミに言い聞かせておかなかった! あいつはすごくバカで、純粋で、俺のことしか考えないような女なんだよ! どうして条件をしっかり伝えてくれなかったんだ…………そうしたら俺が見つけてやったのに…………」


 いつの間にか白くて丸くてブヨブヨしたものが、俺の目の前に居ることに気づいた。


『ブヨブヨとは失礼な。これはね、おっぱいだよ、おっぱい。男ならみんな好きだろう?』

「腹から背中から、そんなのが大量についてたら欲情のヨの字もねえよ! つかお前、本当に地母神ってやつなのか?」


『そうだよ。地母神であり豊穣の女神でもある』

「…………はぁ、もう何でもいい……ナオミが生き返れないなら、俺だけ生き返っても仕方がない」


『ああ、残念ながらキミをあちらの世界へ返すわけには行かなくなった』

「どういうことだ?」


『キミ、子を為しただろう』

「子?」


『ああ。既に何人かにはお告げを下してあるが……』

「お告げ? お告げって妊娠って意味なのか!?」


『そうだよ。地母神のお告げとはつまり、妊娠を指す』

「そうだったのか……それでアンネミラやニアのあの態度か……」


『そういうわけで、キミを返すわけには行かなくなった。子を為した以上は責任を以て育ててもらわなくてはならない。ボクの目の黒いうちは、決してヤリ逃げは許さない』

「いや、ちょっと待て、それって……」


『そうさ。戻って子を育てるのだ、賢者サカザキよ。それが使命だ』







 ◇◇◇◇◇



「サカザキさぁあ…………」


 意識が現実に戻る。まどろみのなか、ナオミが抱きしめてきた。


「ナオミ…………すまん、俺はお前を助けるためとはいえ、他の女と寝たんだ。それで、何人か妊娠させちまったらしい。ショックだよな…………すまない」


「ううん。神さまが言ったんです。お腹の子供をちゃんと育てろって。育て終えるまでサカザキさんは元の世界へ戻さないからって」


「そうか…………十何年か、ナオミと暮らせる猶予ができたな」


「何言ってるんですか、サカザキさん。二人だって、三人だってまた作ればいいんですよ。そしたらずっと一緒に居られます。それに…………サカザキさんには他にも女が居るって神さまから聞きました。私だけが頑張らなくても、ずっと一緒に居られます……」


「あいつか……余計なことを言いやがって……」


「ほんとにラヴサカザキになりましたね」


「冗談にもなんねえよ…………」






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