第26話 アカネの素性
謁見室では、国王や王族、傍聴していた貴族たちが退出し、青い服の女たちと大臣、幾人かの文官と護衛が残るだけになった。
「襲撃の件についてはギルドを通しての処分となる。が、まずはギルド内の共犯者を洗い出す必要がある。襲撃者とロイエントの資産の移動は差し押さえるが、処分にはしばらく時間がかかると思ってくれたまえ」
大臣が俺達にそう告げた。
「構いません。何より、我々を信用していただき、心より感謝申し上げます」
アカネが返すが、もっと早く何とかしろよって思うよな。
「最後に、大賢者様が個人的に話があるそうだ」
そう言って退出していく大臣と文官たち。護衛も残さずに退出していく。
大賢者というのは、残された青い服の女性のどちらかだろう。
◇◇◇◇◇
大臣たちが去っていったのを確認すると、上座に近い右側の背の低い女が口を開いた。
「してアカネよ、陛下はご健勝か? そなたも、外交を通せば他に手はあったというのに」
陛下? 陛下っつったか?
「私は家を出た身ですので……」
「いや、アカネ。陛下ってなんだ? 陛下って王様を呼ぶときの敬称だろ?」
後ろからアカネに問いかける。なんとなく、アカネはどこかの貴族の出だとは思っていたが……。
するとアンネミラも声を上げた。
「アカネ、貴族の娘とは聞いてたけど!? お姫様なの?」
「どういうこと!?」
「跡を継ぐのが嫌で逃げてきたって聞いてたけど?」
「アカネ、まだ何か隠してたの? そういうとこムカつく」
他の団員達も、アンネミラと似たような反応を示していた。
そこへ先ほどの青い服の女が――
「アカネはテイル・テルンギリの女王アミラの娘なんじゃよ。家出したから宜しくと、女王陛下から言伝を受けておったが…………クラウトに邪魔されたなら、なぜ外交を使わん」
「私個人の問題です。母の権威に
「なんだよ、アカネがどうにかできたのに俺は振り回されたのか!?」
「ユキさんには申し訳ないと思いましたが……国の内政に他国が出てくると面倒です」
「大臣殿もクラウトの行動を不審に思っておったが、尻尾を出さんので手をこまねいておった。何しろ、表向きはただ、夫婦や恋人がヨリを戻しただけの問題じゃったからのう」
「ユキさんの協力が無ければ証拠が掴めなかったのは本当です」
「それならしゃーねえが……」
青い服の女は膝を突いたアカネに近づき、身を屈める。
「儂も陛下から頼まれた身じゃ。一度、国へ帰って陛下を安心させてやれ。此度のような事件がそなたの身に起こったなどと知れたら、儂が文句を言われる」
「わかりました、大賢者様……」
まああれだ。国同士の間でアカネが厄介な立場だから一度追い返したいんだな。わざわざ身分をバラすってことは。
「それから、リントワールについては確かに離宮に居るが、儂の配下に保護させておる。クラウトには手を出させておらん」
その話を聞いて俺は跳ねるように立ち上がった。クラウトに手籠めにされてないかだけが心配だった。
「マジか! 恩に着る!」
「案内させよう。早よう迎えに行ってやれ」
そうしてもうひとりの青い服の女に案内され、ついに俺はリントワールの元へ。
◇◇◇◇◇
「聖女リントワール、ようやく決着がつきました」
離宮と呼ばれる、王城の離れに通された俺とアカネ。そこには2名の女戦士が詰めていた。俺たちが通された部屋は、大きなガラス張りの窓で明るく、美しい壁掛けに彩られた部屋だった。
窓の外を眺めていたプラチナブロンドの色白の女性。白で揃えられた衣装もさることながら、振り返った彼女はこの世の物とは思えないほどに美しかった。
「アカネ? よくご無事で…………心配いたしました」
「リントワール! 無事でよかった…………」
リントワールと呼ばれた女は駆け寄ったアカネの髪を撫で、聖母のように慈愛の笑みを向ける。アカネもリントワールへ抱き着いた。アカネよりもいくらか背の高い、けれど華奢なリントワール。その落ち着いた様子や所作の美しさからは、とてもナオミには見えなかった……。
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