The only desire
ウェストリア王国での取引を終えた俺は、まだ地図に印のついてない最後の国へ向かう。
セントリア神聖王国。
すごいことに戦争に一度も参加していない。いや、他国とのかかわりを拒絶しているといったほうがいいかもしれない。
そのため、入国審査は類を見ない厳しさだ。
「この国へは何をしに? ご職業は薬剤師、ですか。」
錬金術師は絶滅危惧種だ。職業欄にそんなことを書いたら怪しまれる。幸い、俺は戦闘特化ではなく、薬などの雑貨を作るタイプなので嘘は書いてない。
「観光と研究にきました。この国独自の植物を一度見てみた――」
「薬剤師さんなんですね。どうぞお進みください」
あれ? 待ち時間的にもっといろいと聞かれて検査されると思ったんだけど……
入れたんだし、深く考えるのはやめよう!
まずは、宿をとって、観光名所を調べて、街並みを見学して、やりたいことが多すぎる!
仕方ない。この国はなかなか入れないし、この国独自の文化を持っているからとても魅力的な国なのだ。
♦
観光を始めて三日目。なぜか、警察に呼び出され、なぜか女王と話すことになった。本当に何で!?
「あなたは錬金術師でありながら薬剤師と身分を偽ったということでいいでしょうか?」
この国は王自ら裁判を行うらしい。
つまり、俺は今裁判にかけられているのだ。
「はい。そのとおりです。深く反省しています」
下手な言い訳はせず、おとなしく罪を受けよう。一番危険なのは変に言い訳をした結果王の逆鱗に触れ死刑になるルートだ。
死んでしまっては果たせるものも果たせなくなる。夢のためにも死ぬわけにはいかない。
「弁護人。何か言いたいことはありますか?」
この国に知り合いなど一人もいるはずのない私は、国から提示された弁護士の中から彼を選んだ。
実績があったのと、顔が真面目そうだったからだ。
「はい。彼は身分を偽り入国したあげく、私を弁護人に選び、私の家族旅行をつぶしました。よって、死刑を求刑します」
自分の耳を疑う。「死刑を求刑する」……?
弁護人が一番言っちゃいけないセリフじゃないですか?
「それは重罪ですね」
え? なんで女王もガチっぽくなってんの?
職業偽ったことより、家族旅行潰したほうが悪いのか。
国も最初から彼を選択肢から外しとけよ!
「では判決を言い渡します」
こんな簡単に人生が終わるのか。やらなきゃいけないことまだいっぱい残ってたのに。
「被告人は、条件付きで無罪!」
え? 条件付きとかありなんですか? あと、なんで?
「あなたは、この国の最後の希望なんです」
ダメだ。余計わけわからなくなってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます