The Last Alchemist

ポラリス

The first episode

 この世界は生まれたばかりの子供だ。

 文明が発展してすぐ、人々は領土を取り合い戦争を始めた。


 そんな戦争の歴史の大半を占めているのが「錬金術れんきんじゅつ」だ。

 錬金術それを使えば、大気を毒ガスに、雲を氷塊にすることだってできる。

 勉強さえすれば人を殺せるこの技術は様々な国によって研究された。


 しかし、日々新しい武器が生まれる戦時中において、錬金術は失われていった。

 簡単で強い錬金術がなぜ失われたか疑問に思っただろう。


 理由は簡単だ、より簡単で、より強い武器が開発されたからだ。

 鉄の筒に弾丸と火薬を詰め、引き金を引くだけ。銃火器という技術を発明した国は今もなお、多くの国と戦い、勝ち続けている。


 これは、そんな未熟な世界で生きる一人の少年の物語である。



「陛下、この度の謁見をお許しいただき、心より感謝申し上げます」


「よい、顔を上げよ、して、其方の大きな商談とはなんじゃ?」


 ウェスタリアン帝国。錬金術が主力の時は大国だったけれど、錬金術とともに衰退した国。おそらく、大量の錬金術の文献が残っている。


「そのお話というのはですね、この国にある錬金術に関する本すべてと、金三トンを交換してはいただけないでしょうか」


「本当に、金三トンを用意できるのか?」


 俺みたいな流れ者にそんな話をされて疑うのは当然だろう。もちろん、金三トンなんて持っていない。

 俺には錬金術がある。そこら辺の石ころでも集めて金に変えれば三トンなんてすぐに集まる。

 もちろん金の錬金は国際法で禁じられているけれど、戦時下の今そんなもの気にする人はいないし、そもそも誰も錬金術を覚えていない。


「明日の昼までには必ず用意できます」


「わかった。其方を信じよう。ではこちらも明日の昼までに本を集めさせるとしよう」


「ありがとうございます」


「謁見は終わりだ。下がれ」


 謁見の間の扉を閉めると、帝王の側近であろうものの声が聞こえた。


「陛下!? よろしいのですか?」


「大事なのは人を信じる力じゃ」


「陛下がそう仰せられるなら……」


 なーにが「信じること」だ。数年前まで人を殺しまくってたくせに。

 まあこれでこの国でやることも終わったな。


 翌日の昼、約束通り大量の書籍と金を交換して取引は終わった。

 地図を開き、この国にバツ印をつけると、しるしが付いてない国はもうあと一つだけになった


「あと少しだ」

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