第20話 金髪ギャルの音楽性と親和性
危うく杏子にルナレスの廃人だとバレそうになった俺だったが、なんとか誤魔化すことに成功して、それ以上杏子からそのことを訊ねられることはなかった。
杏子はルナレスのことを知っている人間だからこそ、俺があのゲームの廃人ってことがバレたら気持ち悪いと思われるのは必然。
こればっかり恋愛脳とかじゃなく、シンプルに同居している義兄として、杏子に気持ち悪いと思われるのは嫌だ。
(とにかく、ルナレスの廃人だってことは絶対にバレないようにしないと)
俺は心に決めて、今日も一人寂しく高校生活を送るのだった。
☆☆
そして放課後になり、今日は結珠奈と二人で楽器ショップへ向かう。
「んじゃ、案内よろしく。兄さん」
「お、おう」
二日連続で義妹と放課後に出かけることになるとは。
昨日は紅葉との買い物で弟にされそうになったりして、とんでもない買い物になっていたが、今日は結珠奈か……。
紅葉ほどヤバさはないものの、ヤバい要素は同居を始めて数日で体感しているわけで。
俺は隣を歩く結珠奈の方に視線を向ける。
背中ではギターを背負い、正面では紅葉と同じくらい重たそうで大きな胸を縦に揺らしながら歩く結珠奈。
背中のギターに金髪ショートという髪、さらにその無愛想な感じも相まって、メタル系のバンドやってる雰囲気がある。
メタル系というか、聞いてるこっちからしたら結珠奈のギターは絶叫系アトラクションなのだが。
「さっきからチラチラこっち見てなんなん? 言いたいことでもあんの?」
俺が横目で結珠奈のことをチラチラ見ながら考えていると、結珠奈はキレ気味で俺を睨んでくる。
「べ、別にそういう訳じゃなくてだな! えっとー、結珠奈ってなんでギター始めたのかなーって聞きたくて」
俺は誤魔化すために、咄嗟の機転で質問を引っ張り出す。
「ギターを始めた理由ってこと?」
「あ、ああ。まだ聞いてなかったなって」
「……死んじゃったお父さんがさ、ずっと趣味でやってたみたいで。そのギターを貰ってなんとなく始めた」
結珠奈は寂しげにそう言う。
あのギターはお父さんの形見だったってことか。
「でもさ、あたしのギターは完全に独学だから、プロとかのコード進行とあたしの感性が真逆すぎてなかなか受け入れてもらえないっつうか」
ちゃんと自己分析はしているみたいだが、コード進行うんぬんの話ではないと思うのは俺だけだろうか……。
「前の家に住んでた頃はギターを弾くと紅葉にはうるさいって言われるし、杏子にも嫌な顔されてた……でも、こっちの家に来て兄さんは同じ部屋にいても文句言って来ないじゃん? だから、その……兄さんとは、音楽の波長が合うのかもって」
「え……」
俺は割と真面目に嫌な気持ちを込めた「え……」を口にする。
ま、まずい。好きに弾いていいって言った手前、クレームを言いにくくなってるだけなのに、まさか同族だと思われてんのか!?
「そんな人これまでいなくて、素直に嬉しいっつうか……その、あんがと、兄さん」
結珠奈は照れくさそうに笑いながら、ちょっぴり嬉しさのこもった声でお礼を言ってきた。
普段はツンケンしてるけど、ちゃんとありがとうと言えるところに結珠奈の人としての良さが出ている……が、今の問題はそこではない!
結珠奈はどうやら、俺が同じ音楽性の持ち主だと完全に勘違いしている。
そんなこと言われたら、さらに文句言えなくなるじゃないか!
「てか今日一緒にわざわざギター直しに行ってくれるのも、兄さんがあたしのギター聴きたいからだったりして?」
「そ、そんなんじゃない!(本音)」
「ったく照れちゃって。いいよ、直したらもっと聴かせたげるし。あ、ショップ見えてきたね」
マジでそんなんじゃないって言ってんだろうが!
やばい、完全に俺が結珠奈のファンだと思われてる!
「兄さん兄さん、早く直しに行こうよ!」
「あ、お、おお」
俺は今夜が峠だと覚悟しながら、ショップに入るのだった。
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