第26話 秘奥義の出番なんだがぁ?
㉖
「【魔法剣】【ダークテンペスト】」
ダークテンペストは闇と風の複合属性超級魔法だけど、魔法剣スキルで剣に付与するなら問題ない。
ゲーム時代だと付与した魔法攻撃力と属性値を加算するだけだったから、カスタマイズした魔法をそのまま撃った方が強くてロマンスキル扱いだったんだよねぇ。
でも、こういう状況ならむしろ丁度いい。
「ンニャァァッ!」
おお、眩しっ。
神獣ラインカッツェの
光属性のビームが白剣竜の頭を飲み込んでる。
でも、たしかあれは魔法攻撃判定。
白剣竜は光属性にも耐性があるし、子供たちを巻き込まない程度に抑えてるっぽいから、ダメージは軽微のはず。
目的は目くらましだろうねぇ。
「ナイス援護です!」
飛び上がって大上段に剣を構える。
閃光が途切れた。
でも視線はフィアに向いたまま。
じゃあその腕、もらうよ。
「グルアァアアアアアっ!?」
バランスを崩したね。
ならこのまま首までいこうか。
「グルァッ!」
「おっと」
腕が千切れても戦意は衰えずかぁ。
さすが。
自分の身体ごとブレスで焼きにくるとはねぇ。
いや、これは止血のついでか。
賢いねぇ。
「ふっ……!」
うおっと!?
角で弾かれた。
スキル無しとはいえ、この剣にダークテンペストを付与した状態でもダメかぁ。
弾き飛ばされちゃったし、仕切り直しだねぇ。
「にゃん」
「ええ。剣状の尻尾も近い硬度があると見ていいでしょう」
とか言ってたら尾の薙ぎ払い。
跳ぶしかなさそうだ。
たぶん勝てるけど、力比べは疲れそうだし。
あっ!
「飛ぶ気です!」
サンダーを何発か撃ってみたけど、意に介した様子はないねぇ。
やっぱり下級魔法じゃダメかぁ。
中級魔法なら多少怯ませることもできそうだけど、余波と残留魔力でリリアの魔力制御が狂ったら、子供たちが全滅する。
ちょっとハイリスクローリターンな賭けになっちゃうかぁ。
「フィア、空中戦は?」
「にゃっ!」
「それは上々。尻尾と角、ブレスに注意していきましょう」
この世界でのHPの仕様がよく分からないけど、さすがに首を刎ねられたら死ぬだろうし。
さて、飛ぶ手段はいくつか持ってるけど、剣主体なら空中に足場を形成するのがいいかねぇ。
「【ヘルメスの脚】」
息を吸うような予備動作。
強めのブレスだね。
それに紛れて跳び上がろうか。
翼を切り落としたいねぇ。
あれで飛んでるというよりは補助器官だから、地上に落とせるかは怪しいけどね。
「シャァァア!」
フィアも考えは同じっと。
飛び方も僕と同じだねぇ。
顔の周りを跳ねまわりながら翼を狙ってるのね。
それなら僕は、後ろから直接狙おうか。
「おおっ?」
驚いた。
全方位への魔力放出か。
しれっと物理属性の切断効果があるのが嫌らしい。
対魔障壁だけだと直撃ダメージを受けるやつだよ。
さらに追い打ちで尻尾、と。
フィアの相手をしながら、器用だねぇ。
これは剣身を滑らせて受け流して、剣術スキル、【飛燕剣】!
飛ぶ斬撃を、見たことあるか、ってね。
「グァッ……!? ガァァアアアァ!」
ナイスフィア。
片翼のついでに片目も奪えた。
そこへもう一発、【飛焔剣】!
さすがにもう飛んでられないようだね。
白い巨体が落ちていく。
でもここで油断できないのがドラゴンって生き物だよ。
最後まで油断せず、全力で仕留める。
「フィア、離れていなさい」
「にゃっ?」
上限レベルを突破させる隠しクエストの発生条件には、近接ジョブの奥義も自分で編み出さないといけなかったからねぇ。
大賢者の僕も、超威力の剣術スキルが使えるんだ。
「【秘奥義 神滅迅雷の一閃】」
これはあらゆるバフとあらゆる技術な強化を瞬間的に、最大出力で乗せた居合。
今の僕ですら認識が追い付かなくなる速度で突進しながら剣を振るう、文字通り神速の一閃。
気が付けば白剣竜の巨体は後ろにあって、目の前の壁には巨大な斜めの傷が一つ。
白剣竜はその身を真っ二つにされて、無残に横たわっている。
さすがに、もう生きてはいないでしょうねぇ。
「ふぅ」
扱いが難しい技だからちょっと不安だったけど、案外身体が覚えてるもんだねぇ。
これ、半分自爆技だし、最悪フィアにあとを任せないといけなくなってたけど。
でもちょっと使ってみたくなったんだから仕方ないよねぇ。
それに、近接スキルはアドバンスジョブまでのものしか使えないから、長期戦になってたかもしれないし。
そしたらリリアが大変だ。
「にゃっ」
「おっと、そうだね。子供たちは大丈夫かな?」
早く脱出させてあげないと、魔力酔いがまずそうだ。
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