第4話 一瞬で家ができちゃったんだがぁ?

 建材は、まだストレージにただの木材が残ってるね。

 なんの余りか分からないけど、使っちゃおう。


「【簡易建築】……おおっ、こんな感じかぁ」


 地面に並べた木材が浮き上がって勝手に組み上がってるよ。

 やろうと思えばある程度はこちらで動かせそうだね。


 ……家ってこんな一瞬で建つんだねぇ?

 これは便利だ。


 二段回目のアドバンスジョブなだけはある。

 これがベースジョブの木工師なら、全部手作業必須だったんだろうねぇ。


「でも、なんだか味気ないねぇ……」


 さすがに簡単すぎたよ。

 こんなに簡単なら、この小屋ももう少し手を入れられるねぇ?


 ユーザビリティ的にもデザイン的にも色々気になるところがあるし。

 あそことか、こことか。


「これはもうやるしかない」


 大工道具は……あったあった。

 ゲーム時代に愛用してた最高等級オリジナル大工セット!


 当時最上位金属だった神鉄をメインにオリハルコンやらアダマンタイトやらを適宜混ぜ込み、研究に研究を重ねて作った特殊合金製の一品だ。


 聞いたところによるともう一つ上の金属も出てるみたいだし、いずれはそれを使ってグレードアップさせたいねぇ。


 あの頃の仲間にはまた呆れられそうだけど、まあ、またロマンで押し通すだけさ。


「……そういえば、僕以外にもこちらに来てる人はいるのかねぇ?」


 僕だけって方が不自然な気がするんだよねぇ。

 当時のフレンドもいくらか来てたりして。

 

 まあ、仮にこちらに来ていても、彼らなら問題ないでしょう。

 一癖も二癖もある連中だったけど、実力は確かなんだし。


 特に、あの隠しクエストを一緒にクリアした連中はねぇ。

 

「おっと、作業作業」


 余裕がどれくらいあるかはよく分からないからねぇ。


 さてさて、どこから手をつけようか。

 仮住まいだからそこまで大規模な装置は作らないとして、玄関の階段に手すりは欲しい。


 中の細かい段差は全部削っちゃいたいねぇ。

 ああいう段差はふとした時に躓いて大惨事になるんだよ。


 あ、奥地のモンスターも出てくるならこの壁じゃダメだ。

 金属板で補強、すると耐荷重が怪しいか?


 計算してみないと分からないけど、ちょっと不安だねぇ。

 基礎もあまりガッチリしてなかったし。


 ルーンを刻んで結界を張る形式にしようか。

 それするならこの辺り一帯を囲んでもいいんだけど、まずは家かなぁ。


 まずいねぇ、ちょっと楽しくなってきた。

 

「あくまで仮住まい、仮住まいっと……」


 どうせ拘るならこんなワンルームじゃなくて、色々できる家がいいしね。


 ともかく、まずは結界だね。

 簡易版だし、直接柱に刻んじゃおうか。


 木工刀も当然揃えてある。

 ルーンを刻むなら、これだ。


「おおっ!?」


 なんだこの切れ味。

 木材がまるで豆腐じゃないか。


 砂場にお絵描きする感覚でルーン文字を刻めちゃうよ。

 へぇ、スルスル。


 下手な剣より切れそうだねぇ。

 さすが神鉄合金製。


「……あ、ちょっと書き込みすぎたねぇ」


 対物理、対魔法、それから対衝はまあ、元々の予定通りだからいいとして。

 反撃魔法のアレコレはさすがに過剰な気がするねぇ。


 こういうのは術者の魔力依存だから、大賢者の僕が刻んだものなら地形が変わりかねない。

 最上位のマスタージョブは伊達じゃないからねぇ。


 僕の場合、隠しクエストをクリアして上限突破してるから余計だし。


 仕方ない、削りとっておこう。

 力作なんだけどねぇ。



 

「うん? もう夕方か……」


 思ったより時間経ってたねぇ。

 通りでお腹が空いたはずだよ。


 夢中で何かするなんていつぶりかねぇ。

 おかげで家具も色々揃ったから、今夜は快適に眠れそうだよ。


 寝具とね、椅子には拘らないとだよ、若者よ。


「……誰に言ってるんだろうねぇ、僕は」


 一人の時間が長くなると独り言が増えるって言うけど、まだ一日目なんだよねぇ。


 さて、夕食はストレージのありもので済ませて、寝る前に本宅の設計をしようかね。

 構想はざっくりできてるし、そんなに時間はかからないはず。


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