19 確かめたい

 「結局、いつまでいるつもりなの?配信もしてないみたいだし……事務所も流石に怒ってるんじゃない?」


 「令那に心配されるとは思わなかった」


 箸を置き、ソファに深く腰掛け、私を見ている。何か言いたげに、言葉を探すように。


 「だって、いつまでもこうしているわけにはいかないでしょ。私は引退したけど瑠莉は活動休止中……早く戻らないとファンも減るんじゃない?」


 「令那が探索者をやめて引退を撤回するなら、私も配信に戻ってあげる。そのときは……そうね。もう脅しも意味がなくなってしまうから、家に帰るわ嫌々だけど」


 紡ぐ言葉は冗談交じりに軽く聞こえても目だけは私の反応を知ろうとして、まっすぐ見つめる。相変わらず顔だけはいい。お互い様だけど。


 「探索者を辞めるつもりはないから」


 「なんで……怪我でもしたらどうするの?怪我で済めばいいけど、死んでしまったらどうするつもり?今日の配信もみてたけど、結構危なかったよね?」


 「なっ勝手に見ないでよ。ってどうやって配信を見つけたの?」


 「簡単じゃない。難波ダンジョンでフィルターを掛けて、独りしか映ってないチャンネルを見つければいいだけでしょ。ソロなんか令那以外にしている人いないし」


 そういいつつ、私の腕を掴んだ。激痛が走って、叫びそうになる。


 「別に……危ないことなんてなかったし」


 「嘘よね。いまも必死に耐えてるだけでしょ」


 私は会話を切り上げようとして、ソファから立ち上がる。


 「……自分のことは自分で決める。追い出されたくなかったら放っておいて」


 「そんなに心が弱かった?あんな炎上くらいなんともないでしょ」


 「うるさい!瑠莉にはわかんないでしょ。炎上したこともないくせに知ったような口を利かないでよ」


 「どこいくつもり?」


 私は返事することなく寝室へ向かった。瑠莉ならわかってくれると思ったのに……。同期として五年間も一緒に配信活動してきた今までの時間はなんだったの。


 ベッドにうつ伏せに倒れる。もうなにもしたくない。頭のなかを色んな感情が渦巻いて、でもどこにもぶつけられなくて……私はなにも悪くないのに。


 「……令那、泣いてるの?」


 「どっかいって」


 「ねぇ……さっきは私も言い過ぎたわ」


 「どうでもいいから触んないで」


 ベッドが沈む。柔らかくて甘い香りがして、それが瑠莉のだってわかるから、余計に嫌になる。


 「私は……令那のことが好き」


 「……だから?」


 「こっち……向いてくれる?」


 「はぁーだる。なんなの。放っといてって言って……」


 いつの間に取ったのか、シークピストルをこめかみに押し当て、引き金に指を添えている。平然と、なにもおかしなことがないみたいに。


 「あなたに嫌われたら……私は生きていけないの。だから、許してくれる?」


 「それ……ずるくない?」


 「そう。私はずるいの」


 ゆっくりと刺激しないように、瑠莉の右手からそっと銃を取り上げる。そうして、距離が近づいて、どちらからともなく唇が重なる。優しく舌が交ざり合い、瑠莉の下唇を甘く噛んだ。


 「餃子の味がするわね」


 「最悪なんだけど」


 「ふふっ……でも、そういうところも好き」


 「はいはい」


 徐々に顔が下がっていって、下着の上からそっと撫でられる。その感触にまだ慣れそうにない。心臓が馬鹿みたいに騒いでいて、その期待で破裂しそうになる。


 「疲れてるのに……凄いね」


 「うるさい、するなら早くして……ひゃん」


 下から上にざらざらした感覚が走り、思わず声が出てしまって、恥ずかしくて、両手で顔を隠した。


 「かわいい。その顔もっと見せてよ」


 「やだ」


 きっと、私は酷い顔をしているから見られたくないのに。どこから用意してきたのか、手錠を両腕に嵌められ、頭の上に固定される。


 「ほらっ、もう二本も入ってる。よっぽど気持ちいいのね。ぎゅうぎゅう締め付けて離そうとしないもの」


 「あっあっ……うぅ」


 ガチャガチャと手錠が音を立てる。パンパンに、いまにも爆発しそうなくらい張りつめた快感が、なんどもなんども押し寄せて、私を壊そうとする。


 「いや……もう無理」


 「大丈夫、明日は休めばいいから。今日はいっぱいイっていいからね」


 「ダメ……もう……許して」


 これ以上ないくらい足が伸びて、腰が揺れる。視界がスパークして快感に焼き切れそうになる。


 「今度はこれ使おっかな」


 「はぁはぁはぁ……そんなの入らない」


 「これだけ濡れてれば、いくらでも入るわよ。ほら……右手がびしょびしょになっちゃった」


 入り口に指とは違う異物がめりめりと入りこもうとして、抵抗しようとしても、敏感なところを攻められて力が抜ける。


 「あっ……入っちゃった」


 「いっ……いたい」


 「大丈夫。ゆっくり馴染ませれば病みつきになるわ」


 涙とか唾液でぐちゃぐちゃになった私を、瑠莉は恍惚とした表情を浮かべて見下ろしている。目を細め、巧みに腰を動かし、弱いところを探っては、集中的に擦りつける。どんどん、この異物に慣らされ、指では届かない奥深くまで責められ、もう耐えられなくて……。


 「よかった。私が最初で。他の奴にこんな表情見られたくないもの」


 「あっ、うっ……いや、見ないれ……またイクッ……あっ」


 「ふぅ……あーあ漏らしちゃったね」


 「らめ……とまらないの……いやっやだ」


 両手は手錠に縛られ、身体は抑えつけられ、足をジタバタさせるしかないのに、あまりに責められすぎて頭が馬鹿になって……うまく喋れなくて。


 「大丈夫だよ、令那のこと大好きだから……だから、もっとしようね」


 意識を飛ばしては、快楽に叩き起こされ、ずっと責められ、イカされ続け、気づいたときには朝を迎えていた。

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炎上した配信者は、素性を隠し貯めた収益(金)の力で最強探索者になる。(修正中) UFOのソース味 @kanisan

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