カブーム、ファブーム

 KABOOOOOOOOM!!!!!!!!!!!!



 爆炎と共に、一人の男が現れる。


 あぁ、だ。

 忘れもしない。


 ……いや、忘れられない。


 何せ、お前は全ての元凶じゃないか。


 なぜだ。なんで、なんで───



「───なぜお前がここにいる、ジョン!!!!」



 ジョンは殺山ころすやまを一瞥すると、鏖殺神みなごろしんの方を向く。

 爆煙が晴れる。すると、驚愕すべきことに、悪霊のビーム攻撃では傷一つついていなかった鏖殺神みなごろしんが大きく体を吹き飛ばされた姿で居た。苦しげな表情でジョンを睨みつける。


「貴様……なぜ吾輩に傷をつけることができる!? 吾輩は神だぞ!?」

「そりゃ、こいつを使ったからな」


 そう言ってジョンは右手を上げる。

 その手に持っていたのは───


(……手榴弾……?)


 手榴弾、のように見えるものであった。


「こいつは手榴弾だ。投げたら爆発する」


 手榴弾で合ってた。


「そんなもので、この吾輩に傷をつけられるはずが無いだろう!! 何をした、人間……!!」

「いいや、そんなものだから、お前によぉく効くんだよ」

「……はぁ?」


「───いいか、教えてやる。過去信仰を否定するのは、いつだって未来科学なんだよ」


 そう言って手榴弾を投げる。



 FABOOOOOOOOOOOOM!!!!!!!!!!!!!!!!!



 手榴弾は鏖殺神みなごろしんに直撃すると、大きな爆発を引き起こした。


 宵闇に、おおきな火の粉の華が咲く。


 それは、まるで大きな彼岸花のようであった。


「───クッ、ぐぅううう……!」


 煙が晴れる。鏖殺神みなごろしんは、もはや満身創痍であった。

 だが───


「神を、舐めるなぁぁああああ!!」


 鏖殺神みなごろしんは肉の内から手足や顔などが盛り上がるようにして肉体を再生し、それどころか最初よりも大きな身体を生成した。


「うわお」


 そして、神は無数の手を伸ばし、ジョンを握りつぶさんとする。


「こりゃマズイ」


 ジョンは奇跡的な身体能力で攻撃を回避する。が、一つを避けても間を入れずに次が来る。避けても避けても終わらぬ攻防。

 "次"は、何も新しい手が伸びてくるだけではない。それに気を取られていると、少し前に避けたばかりの腕から別の腕が生え、それがジョンを捉えることもある。

 まるでそれぞれの手が生きているかのように的確に動く。

 挟み撃ちをしたり、片方を囮に本命を紛れ込ませたり、そしてその本命を意識したところで囮側から新しい腕を伸ばしてジョンを潰さんとしたりと、歴戦の猛者のような連携を繰り出す。


 流石に避けきれないのか、ジョンの身体には段々と抉られた生々しい傷が目立ってきた。


 そして、だんだんと動きが鈍くなり───


「やべっ」


 ついに、腕のひとつに掴まれてしまった。


「くっ……!!」


「ハッハッハッハ……終わりだ、神を穢す不届き者め」


 鏖殺神みなごろしんはジョンを持ち上げ、少しずつ力を込める。

 ジョンの苦しむ様子を楽しむ気のようだ。

 分かる、分かるぞ。俺もジョンを殺した時は楽しかった、と殺山ころすやまは思った。


 だが、ジョンはタダでは終わらない。


「……ありがとう、お前の醜い顔がよぉく見える場所に動かしてくれて」


 そう言うと、ジョンは右手に持っていた手榴弾を鏖殺神みなごろしんに投げつける。



 FABOOOOOOOOOOOOM!!!!!!!!!!!!!!!!!



 爆音が轟く。鏖殺神みなごろしんが怯んだのか、握る力が弱ったようで、その隙にジョンは服の中に隠し持っていた無数の手榴弾を取り出し、鏖殺神みなごろしんに次々と落とす。



 KABOOOOOM!!!!!!!!!!!!


 FABOOOOOOOOOOM!!!!!!!!!!!!!!!!!

 FAFAFAFAFABOOOOOOOOOOOOM!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 FAFAFAFAFAFAFAFA──────
















































「はぁ……はぁ……持ってきた手榴弾、全部使っちまった。やったか……?」


 鏖殺神みなごろしんの拘束から脱すると、ジョンはそう漏らした。


 爆炎が引かない。だが、鏖殺神みなごろしんが動くような気配も無い。


 死んだか、死んでいないのか。死んでくれていたらありがたいが……。


 ジョンは、大学の合格発表を待っている受験生のような気分で爆煙をじっと見つめていた。



 グワッッ!!



 現実は非情である。



 ガシイッッ!!!



 ジョンは煙から生えてきた手に掴まれた。


「今のは痛かった……痛かったぞ……!」


 鏖殺神みなごろしんは、生きていた。


「……絶対に許さんぞ、この人間風情が!! じわじわとなぶり殺しに───」


 と、







 CHOP-CHOP-CHOP-CHOP……







 どこからか異音が流れる。


「───っ!? な なんだ!? このバラバラという音は…!?」


「───あぁ、間に合ったか。よかった、よかった───鏖殺神みなごろしんよ、どうやらこの勝負、オイラの勝ちみたいだな」


 ジョンは、追い詰められているにも関わらず、安心しきった様子で笑みを漏らす。


「……きッ、貴様!! 何をした! 言え!!」


 鏖殺神みなごろしんはジョンを強く握る。

 だが、ジョンはすこぶる冷静に鏖殺神みなごろしんを見下ろし、言った。



「こうなるだろうとは思っていたからな、呼んでおいたんだよ。

 ───時に旧時代の遺物よ、お前らにとって一番不利な相手ってなんだと思う?」



「───はぁ? 急に何を───」










































































































































































信仰を否定する時代現代文明の象徴───すなわち、米軍さ」























『Overlord, this is Viper 1 flight, three birds on station, over.』


『Viper 1 flight, this is Overlord. Roger. Search and confirm target Minagoroshin, over.』

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