第2話 クールな仮面と甘すぎる本音

キーンコーンカーンコーン。


無情にも授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。

俺、相田拓海は、半分放心したまま、鳴り終わったチャイムの余韻を耳で追っていた。


(マジか…マジなのか…?)


さっきから頭の中に鳴り響く、甘すぎる幻聴(?)。

隣の席に座るクールビューティー、白石莉乃の心の声が聞こえるなんて、そんなラノベみたいな展開が、この俺に起こっている。

信じられるか?いや、信じられない。でも、聞こえてしまっているのだから、認めざるを得ない。


ちらり、と横目で白石さんを窺う。

彼女は終わったばかりの数学のノートを静かに閉じている。その一挙手一投足が、洗練されていて絵になる。

表情は相変わらずのクールビューティー。涼やかな目元は、感情の起伏を一切感じさせない。


(本当にこの人から、さっきの甘々ボイスが…?)


疑念が鎌首をもたげた、その時だった。


ガタッ。


「おわっ!?」


混乱のあまり、俺は机の上の教科書やノートを雑に片付けようとして、腕が筆箱に当たってしまった。

筆箱が机の端から滑り落ちそうになる。


その瞬間、スッと白い手が伸びてきて、落ちる寸前の俺の筆箱を優しく押さえてくれた。

白石さんの手だった。


「あ…」


『危なかった…!拓海くんの大事な筆箱が…。あ、今、筆箱越しだけど拓海くんの体温が伝わってきた気がする…!どうしよう、ドキドキする…!』


「……っ!」


ダメだ、本物だ!

というか、筆箱越しに体温は感じないだろ!たぶん!

俺は慌てて筆箱を机の中央に引き寄せる。


「わ、悪い!助かった、ありがとう白石さん」


「……別に」


ツン、とした素っ気ない返事。いつもの白石さんだ。

だが、心の声は全く違う。


『どういたしまして、だよ、拓海くん…。もう、そういう素っ気ないところも好き…。でも、今ちょっと顔赤くなかった…? やっぱり私のこと、意識してくれてる…? 嬉しい…嬉しい…!』


意識しまくりだよ!

こんな状況で意識しない方が無理だろ!

俺は顔に集まる熱を誤魔すように、意味もなくカバンの中をゴソゴソと漁った。



休み時間になると、白石さんの周りには自然と女子の輪ができる。

「莉乃、次の小テストの範囲ってどこまでだっけ?」

「この後、購買行くんだけど一緒に行かない?」

彼女はクラスの中心人物でもあるのだ。


「ええ、いいわよ」


友達に見せる表情は、俺に向けるものより少しだけ柔らかい。

それでも、心の声は正直だった。


『あー、みんな来ちゃった…。本当は私が拓海くんに話しかけたかったのに…。『筆箱、大丈夫だった?』ってもう一回聞こうと思ってたのに…。拓海くん、誰かと話しに行ったりしないよね…? しないでほしいな…。休み時間くらい、私のことだけ見ててほしいな…なんて…』


独占欲!

白石さんの心の声、見た目に反してかなり独占欲が強いぞ!


俺は誰かと話す気力もなく、ただただ机に突っ伏して、この異常事態から逃避することしかできなかった。

心臓が、いくつあっても足りそうにない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣の席のクール委員長、俺にだけ心の声が甘々でダダ漏れな件 @123te

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ