王城の隣に魔王城〜姫と魔王が幼馴染〜

タヌキング

姫、魔王城に侵攻するの巻

 余は魔王だ。余は寝室で安らかに寝ていた。

 寝ている時が一番好きである。騒がしくないし、争いから離れた心地良さがあるからだ。だからその眠りを妨げるものは何人たりとて……


「マー君♪おはよう♪」


 甘ったるい声がして、余の体にドシッと女の重みがのしかかってきた。しかも柔らかい二つのご立派を私の胸に押し付けてくるのだから、最早確信犯としか言いようがない、当ててんのよ案件である。


「……ロール姫、毎回毎回、魔王城の余の寝室まで来て、余の眠りを妨げるのはやめてくれないか?」


「えーっ、だってマー君が私を誘拐に来てくれないから、仕方なく私が来てるのよ。どうして城が隣同士なのに早く誘拐してくれないの?」


 そうなのである。この世界のバクと言っても良いのだろうが、王城と魔王城が隣接しているのである。こんな世界があっても良いのだろうか?徒歩1分足らずで王城から魔王城まで行けるとか、一体全体どういう事だろう?

 これでもしも勇者が現れて余を退治するとして、勇者はレベル上げの旅に出なければならないだろう。それはあまりにも情けない。


「もう、早くしないと私がマー君を退治しちゃうんだからね♪」


「怖いこと言うな。そして早く降りてくれ。当てるのをやめてくれ」


 ロール姫をベッドから降ろすと、余は後ろ髪を引かれながらベッドから降りた。時刻はまだ五時前である。こんな時間に夜這いに来る姫はアホであるし、最深部の最深部である魔王の寝室までの侵入を許すとは、魔王城のセキュリティはガバガバとしか言いようが無いだろう。

 不服にも幼馴染のロール姫は、黙っていれば絶世の美女である。童話のヒロインの様に金髪の長くて美しい髪、胸元のバックリ空いたピンク色のドレスは、彼女の武器であるJカップを強調しており、この余ですら目のやり場に困る始末である。


「マー君、それでいつ誘拐してくれるの?誘拐してくれたら、酷いことしてくれるんでしょ?エロ同人みたいに」


「ど、どこでそんな言葉を覚えてくるんだ、はしたない」


 口を開けばこんなことばかり言う、彼女に憧れる市井の民がこんなことを言っている姫を見たら幻滅して暴動が起こるかもしれない。


「魔王は姫を誘拐して処女を奪うのが定番でしょ?」


「前半は定番かもしれないが、後半は絶対に違う。いい加減に卑猥なことを言うのをやめてくれ」


「そうだね、刺激が強いよね。だってマー君童貞だもんね」


「ど、どどど童貞ちゃうわ‼」


 嘘である、300年間童貞である。性行為なんて恥ずかしくて想像しただけで顔が赤くなる。だからロール姫にグイグイ来られるのは非常に迷惑している。


「マー君、大人になろうよ。部下にも示しがつかないよ。童貞魔王なんてゴロは良いけど、あまりに弱そうだよ」


「童貞魔王とか言うな‼魔王城で流行ったらどうする‼」


「いつでも私で筆下ろしして良いよ♪てか姫と魔王に子供が生まれたら世界は平和になるんじゃないかな?」


「もう十分平和だろ‼王城と魔王城がお隣なんだから‼」


 実は余はローラ姫のことは好いているのだが、求婚するにしても流石に姫が16歳になるまで待たねば、余がロリコン扱いされてしまう。ロリコン魔王と陰口を叩かれることだけは避けねばならぬ。

 毎日の誘惑に耐えるのが苦痛でもあり、楽しくもあるから困ったものである。


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