第41話:忍び寄る

「ピッタリなくなりましたね。嫌がらせ」


 生徒会室で生徒会の皆とお茶を飲んでいる中、私はしみじみそう漏らす。

 雷雨学園誘拐事件から結構経ったが、あれ以来青空学園の生徒の頭上から物が落ちてくるなんて嫌がらせはぱったりとなくなっていた。


「そりゃ、警察に目をつけられてんだ。簡単に手を出してこねぇだろ、もう」

「そこまで馬鹿ではなかったというわけですか」


 篠原先輩が紅茶を優雅に飲む。

 するとまい先輩がソファに座る私と未来空先輩の間に後ろから顔だけ出した。


「ねぇねぇ! そんなことよりさ、生徒会全員で映画観賞会は今週末ってことでいい?」

「あぁ。僕は構わないよ。朔君も今週はバイトも休みなんだろう?」

「ッスね」

「やった! じゃあこれで全員スケジュール確保したね。じゃあ今週末、皆で映画に行こう! 遅刻は厳禁だからね!」


 そういえば、生徒会全員でどこかに行くっていうのは初めての体験な気がする。

 先輩達とも仲が良くなってきたし、絶対に楽しい休日になるよね。




***




 日曜日、正午。青空学園校門前で集合ということで、集合三十分前だというのに来てしまった。それだけ待ち遠しかったのだ。手鏡で前髪を確認しつつ、皆を待つ。早く来すぎたのかも。


 ──しかしその時、私は気付いてしまった。

 手鏡に映る──金髪に。


「っ!!!!」

「騒ぐな」


 声を上げようとした瞬間──急に身体が動かなくなる。

 周りの人達は私の異変には気付かない。


 助けて……助けて……!!


「桜!!!!」


 声のする方に目だけ向けると、未来空先輩がこちらに走ってきていた。

 私の傍にいる明さんに気付いているのだろう。


 先輩、駄目! そのまま近づいたら──!


 未来空先輩は私に手を伸ばしたところで、急に動けなくなった。

 明さんの能力はこんな事も出来たんだ……!!

 完全に危ない! 周りの人にさえ、私達の事を知らせられない!!!


「黙って車に乗れ」


 明さんの冷たい声に勝手に従う私と未来空先輩の身体。

 私は唇を噛みしめる。


 なんで、いつも邪魔するの?

 今更未来空先輩に、何故この人は関わってくるの──?


 私は車に揺られている途中、ずっと明さんを睨んでいた。

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