第8話:日曜日

 「たまには朔君以外と休日を送ってみたら?」とまい先輩から映画のお誘いがあった。確かに朔にいつも守ってもらうのも申し訳ないのと、まい先輩ともっと仲良くなりたかったので私は快くそのお誘いを受けた。

 先輩は意外にも「ヒーローもの」の映画が大好きらしく、今日一緒に観る映画もアメコミ原作のヒーロー映画である。


 朝の準備が終わって女子寮を出ると、門の前にまい先輩が立っていた。まい先輩の私服は──やっぱり綺麗だった。お金持ちのお嬢様。そんな言葉を連想させるような桃を基調とした清楚コーデはまい先輩の絹のような白髪がよく映えた。私は思わず見惚れていると、まい先輩と目が合う。


「おはよ。なに固まってんのさ」

「せ、先輩があまりにも綺麗で、つい……素敵です、先輩」


 すると先輩は目を見開かせ、苦笑する。


「……なーに言ってるの。茉莉の方が可愛いに決まってんでしょ! さ、行こう!」


 先輩はそういうなり、私に反論させる隙も与えずに私の腕を引いた。


 ──後から思えば、この時の私は大馬鹿者だった。なんであんなことを言ってしまったのだろうか。

 この時のまい先輩が、どんな顔をしていたのか。それを考えると、胸が苦しくなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る