第24話
ふふふふ、と薄気味悪い笑い声が空に響いた。
夜空に分厚い雲がかかり始める。
離れたところでは雷が鳴っているのが聞こえた。
「あいつが来た。晴道、あれが山神だよ」
安倍が指差す方向を見ると女のような影が立っていた。乱れた髪で隠されてよくわからないが、時々覗く顔には片目だけ無いようにも見える。
女は門野と安倍に気付き睨みつけていた。
「お前ごときがこの私を封じれると思っているのか」
安倍の言うとおり圧倒的に他の妖者たちとは力の強さが違った。ここまで酷いと比にならないどころか死人が出てもおかしくないとさえ思わされる。
気圧されず安倍は淡々と告げた。
「少し調べさせてもらったよ、もともとは人間だったと」
「うるさい、勝手に喋るな!」
山神は怒りで毛が逆立ちゴロゴロと雷鳴が近付いてきた。雲はさらに厚く色濃くなっているのがわかる。
周囲の枯れた草花は茶色く変色し、山頂一帯に生命力を感じられるものは何一つなかったのだ。
これが範囲を広げていったら河川の影響どころか日本全体を混乱に突き落とすことになる。
門野がこの先の動き方を考えているところに背後から足音が近寄って来た。振り向くと坂東が息を切らしながら姿を表した。
「門野…あれが例の山神か?」
「そうです。あれだけ強大な相手だと封じるのにも力を使うし、安倍さんの話だとかなり大きな結界が必要なようです」
門野は安倍から預かっていた地図を広げ2カ所指差した。
「坂東さん式連れて来てますよね?この大きさだと結界を張るのに5つ基準点が必要です。私は3ヶ所やるのであと2ヶ所坂東さんもお願いします」
「封じの術はどうするつもりだ」
「それは考えがあります、私に任せてもらえませんか?」
言い切る門野に一言だけわかったと返し、坂東はポンと肩を叩いて歩いて行く。
しっかりやれよというエールだと門野は受け取った。
門野はすぐ上着の内側から紙人形を3枚取り出し、指に挟んだままふーっと息を吹きかけた。
それぞれ名前の書かれた紙人形は煙と共にポンっという音を立て3体の式が現れた。
式にも地図を見せながら指示を出す。
「白木と秋毫は結界の基準点になるこの2か所にいてくれ。三月は何があっても安倍さんを側で守ってて欲しいんだ」
わかりましたという返事と共に白木と秋毫の2体はすぐに姿を消した。気付くと三月は安倍の隣まで移動している。
安倍はびっくりして三月を見た。
「驚いたな、君は晴道の式じゃないか」
「主人の命で貴方を何があっても守るように、と言われています」
痺れを切らした山神の大きな声が辺りに響く。
「弱いものがいくら集まろうと結果は変わらぬ。陰陽師ごときが我に勝てると思うなよ」
そう言ってパン!と響かせるように手を叩くと山神のちょうど真上に厚い雲が密集し、雲の中では雷が音を鳴らせていた。
すかさず何十体もの妖を安倍と門野を襲うように動かしている。
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