第14話 見栄っ張り
次の日、俺は席に座るといつも道理、やかましい女子どもの会話を聞いていた。
「ミク、おはよう!」
「りっちゃん、一段と暑苦しいね」
向井が登校してくると宮城が挨拶をする。
「あんた、ミクのことになるとテンションが変わるよね」
呆れたように佐藤が言う。
「それはそうでしょ、ミクは私のアイドル!」
私がこうなるのは当然と言いたげな宮城。
「ミクの事は好きなのは勝手だけどストーカーだけにはならないようにね」
「大丈夫だよ、頭の匂いから何のシャンプーを使っているかぐらいしか知らないし!」
「もうストーカーに近いことをしてた!」
自分の友達がストーカー気質があることに驚いている榊原。
話が一段落ついたところで伊勢島が手を叩き、話を変える。
「りっちゃんがストーカー気質があるって話は置いといて……カナちゃん!レイくんに伝えてくれた?」
「昨日の今日なのに…千奈ちゃんったら、どんだけ食い気味なの?」
おっと、いきなり見栄っ張りがピンチらしい。
「佳苗、これ毎日言われるやつだよ」
「だってぇ!もうすぐ夏休み始まるし、しっかりとスケジュールを抑えて準備しとかないと!」
「千奈しかないと思う……」
テンション高かった宮城がいつの間にか平常運転になっており、佐藤に向かってそう投げかけた。
「そういうりっちゃんだって、カナちゃんに紹介してもらうの待っているだよね?」
「え、そうなの?」
「私を巻き込むんじゃないよ。それに私はみんなと遊べればそれでいい」
淡白な宮城らしい答えに二人は苦笑いを浮かべる。
「面倒くさいなら、いっそ連絡先教えてよ!千奈が直接お願いするから!」
「えー、どうしようっかなぁ……悪用されそうだし」
「悪用って何!?千奈は個人情報売買業者じゃないよ」
うはは。あの見栄っ張りめ、イジってるフリして困ってるのを誤魔化してやがる。
笑いをこらえるのが辛いから、寝たフリしよう。
「ところで来週、期末テストだけどみんな大丈夫?」
「キマツテスト?なにそれ?」
「さぁ〜一体なんだろうね?」
惚けるふたりに対して苦笑を浮かべながら向井が忠告する。
「現実逃避は行けないと思うよ?遊ぶならテスト終わってからの方がいいよ。ねえ、佳苗ちゃん?」
「あ〜うん、そうね。ミクの言う通りだわ」
絶対見栄っ張っている榊原に俺は少し呆れ混じりにため息を吐く。
「赤点取ったら大事な夏休みが補講で潰れちゃうよ?」
「そうだね、勉強しよう!うん!しよう!ということでミク様、勉強を教えてください!」
佐藤が向井に頭を下げる。
「いいけど数学と科学は無理だよ?私、苦手だから」
「それなら科学の方は私が教えて進ぜよう」
「じゃあ、アタシは数学の方を教えてあげる」
「みんな!」
佐藤が感激したかのようにふたりに抱きつく。ちなみに俺は勉強しなくても余裕で赤点を回避できるのでバイトに集中している。
「じゃあ、今週末お勉強会しよう」
「そうだね、そういえば小鳥遊くんって秀明だったよね?頭いいじゃないの?」
「あ〜!せっかくだし、レイくんに来てもらようよ」
目をキラキラさせながら佐藤が言う。
ま、待って……俺を巻き込むじゃない。
「で、でも向こうもテストで忙しいと思うし」
「大丈夫だってば!カナちゃんが頼めばきっと来てくれるよ。彼女なんだしさ」
「こいつ、勉強は二の次で夏休み前に男紹介してもらうつもりだぞ」
宮城がジト目で伊勢島の方をみる。
「でもさ、戦力は多い方がいいじゃん。ミクは理数系が苦手だし、カナちゃんだってそうでしょ?これは真希たちのためでもあるだから」
「すんげぇ、適当にもっともらしいことを言ってる。だけど確かに一理あるわ。佳苗、頼める?」
「しょ、しょうがないなぁ、もう」
おい、了承するな!見栄っ張り!
「じゃあ、決まりね!ミクも参加だからね!」
「うん!いいよ!」
始業のチャイムがなり、解散する女子グループ。
「むふふふふ」
その最中、向井がこちらを見て、気色悪い笑みを浮かべていた。俺はそれを無視する。
「やっちまった」
榊原の方を見るとひとり席で絶望の表情をしていた。
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