第4話 なりふり構っていられない
この世には金より大切な物は数えるほどしかない。誰しも、ひとつやふたつくらいあるものだ。
金より大切なものはないとよく言うが、金は何かのために使わなければ意味を成さない。
金は使ってなんぼなのだ。
俺にとってはその対象が、妹の澪と弟の葎、そして病弱な
「しかし、参ったな」
食事をしたあと、すぐに眠ってしまった澪と葎を部屋に運んで考えに
「まだ金が必要なんだけどな」
これまで二人の将来を考え、計画的に金を稼ぎ、貯蓄してきたのだが、俺が就職ではなく、進学をすることになると話は変わる。それに紅葉の入院費、手術費も払わないといけないのでまとまった金が必要になる。それをあと一年で集めるのは無理がある。
労働基準法で高校生は1日8時間以内、週40時間以内しかも22時から5時までの時間帯は働けない。
いくら高校生が頑張ったとしても学業とバイトを両立するのは
うちの特殊な家庭事情では、奨学金もあてには出来ない。
元々不仲だった両親が俺たち三人に最低限生活が出来るだけの金とこのマンションの一室を置いて行方をくらましたのが数年前。
周りの大人たちは両親を探して、また共に暮らすための手助けはしてくれなかった。俺たちに興味が無いんだろう。
俺も澪、葎も生んでおきながら無責任に蒸発していった両親の顔など二度と見たくは無いと思っている。
だから、俺たちは三人だけの家族になることにした。
だか、澪と葎は幼かった。ちゃんと一緒に考えはしたものの、最終的に決めたのは俺だ。
俺が責任を持たなければならない。
「………自分のことを考えなくてはいけないのが、こんなに難しいものだとは思わなかった」
いつか二人がそんな事を言い出す予感はしていた。
だから、もっと早く俺が折れていれば良かった話でもある。
「どちらにせよ、金があればすべては解決する」
金があれば澪と葎を幸せにすることが出来る。
金があれば紅葉は元気にすることが出来る。
金があれば学費だって簡単に払える。
生活に困ることはない。
今、困っているのだって根本的の問題に金だ。
今はその金が足りない。
「澪にはバイトで稼げるお金は限度があると教えないとな………」
今、澪にそう
ならば、やはり俺がもっと金を稼ぐしか、それ以外選択肢がない。
俺の将来のため、とでも言えば澪と葎も理解してくれるだろう。賢すぎるのも考えものだな。
さっそく求人サイトを閲覧し、とにかく高収入のバイトを探し始める。バイトできる時間が限られている以上、高時給のものを狙うしかない。
「ん、何だこの求人?」
『レンタル人材派遣登録!圧倒的な高収入、学生可!楽しく、やりがえのある、触れ合える仕事です!新しい自分がきっと見つかる!』
なんか果てしなく胡散臭いが、なりふりかまってはいられないな。
確かに時給は圧倒的だし、これが本当なら今の倍以上は稼げる。
「善は急げだ、すぐ問い合わせしてみよう。まだ受付の時間だ」
『写真を送ってください』
俺は眼鏡を取り、ボサボサな髪を整え写真を撮って送った。
そして、あっさり採用が決まった。
翌日、さっそく初めてのレンタル派遣されることとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます