第3話

では、そろそろ私がこの世界に来た時の話をしよう。

あまりにも昔のことなので、記憶が曖昧になっているが。確か、童話の本を読んでいた時のことだった。

時空の歪みが発生し、雪国にゲートのように繋がってしまった。

それがきっかけで、この世界にやってきたのだ。


その頃の街は、今とは違い静かだった。

それでいて、街は飾り付けがされ、子どもたちが集まり、

田舎町らしい楽しい雰囲気に満ちていたのを覚えている。私は古い一軒家で孤児院を営む婦人に世話になりながら、

冒険者としての心得を身につけようとしていた時期だったと思う。

退屈だが、のんびりとした時間が流れていく。

そんな日々が続くものだと考えていた。


しかし、それから2年ほど経ったある日、

村で事件が起きた。

いつものように静かな雪国で過ごしていたとき、

軍隊が村にやってきて、占領すると宣言した。当時、何が起こっているのかわからず、

私は街へ連れて行かれ、村はそのまま軍隊に占領された。

その後、村人たちは街で傭兵として雇われることになった。


この事件は、後に何度も噂になる大きな出来事だったらしい。

個人的に調べてみると、かなり大変なことが起こっていたことがわかった。首謀者とされているのは、大国の王妃。

その王妃はセリュといい、悪い噂ばかりの悪女だった。

民に残酷な仕打ちをしたとか、

浮気で家を破滅させたとか、

とにかく悪名高かったらしい。


セリュ王妃は、他の国の王や神々を恨んでいた。

そこで起こしたのが、私が体験した事件――

各地の村を襲撃し、神の名前を奪う「神狩り」と呼ばれるものだ。

他にも首謀者のメンバーはいたらしいが、

いずれも今は裁かれていない。王宮では、なぜかセリュ王妃と私が仲が良いことになっている。

全く遺憾な話だ。

おそらく、村から街へ傭兵として連れて行かれた際、

役に立ったせいで気に入られてしまったのだろう。だが、私には当時のトラウマが今も残っていて、

心から許すことなどできない。

かなり困った状況だ。


王宮で有名な派閥といえば、サーファスと呼ばれる集団だ。

この派閥はセリュ王妃が率いており、

私も一時所属していたことがある。セリュ王妃には娘がいるのだが、

王妃は彼女をあまり気に入っていなかった。

さらに、恋人とされていた宰相も、夫も、

すべて気に入らなかったらしい。そこで、王妃は理想の騎士を作り出そうと、

魔術を駆使して悪魔召喚を繰り返したが、すべて失敗。

この召喚事故は、王宮では有名な話として語り継がれている。


ところで、セリュ王妃の一人娘についてだが。

当時、傭兵として成績が良かった私が、

なぜか彼女の代わりに仕事をする羽目になった。

今でも王宮では、私を王妃の娘と勘違いする人がいる。その身代わりは私だけに留まらず、

宰相や貴族、王子なども交代で担当させられているらしい。

娘本人は、セリュ王妃の娘であることすら忘れているようで、

人間関係はすっかり冷え切っている。


さらに、宰相についてだが、

なぜか私はその宰相と間違われ続けている。

詳しく話すと長くなるので簡略にすると、

ジョセフィーヌ姫が私を宰相と勘違いし、

「宰相と私が同一人物」と間違った噂を世間に広めてしまった。

その噂が今も訂正されず残っているのだ。しかし、世間は活躍する宰相の噂に酔いしれていて、

ただの雑兵が関わっているとは信じない。

世の中とは、真実よりも美しい嘘を好むものだと、

つくづく思う話である。



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