第2話
宮殿で耳にする私の噂話は、ひどいものだ。
この周辺の国を支配する残酷な人物だとか、
金髪の高身長イケメンだとか、
大金持ちの息子だとか。 何だか本人とかけ離れた噂話ばかりで、
どうやってそんな情報になってしまったのか、気になって仕方ない。実際の私はというと、
大金持ちの傭兵だったことはあるが、息子ではない。
高身長でもなく、髪も黒い。
この地域を支配しているのは有名な貴族で、もちろん私ではない。
この私に関する噂話は、何年も続いているらしい。
考えられる原因は、大魔術の失敗か暴走か、
あるいは危険な薬草の使いすぎか。
いずれにしても、良い話ではない。街中では、まれにこの噂を熱心に信じている者もいるので、
そのたびに訂正するのが大変だ。
私だけではない。
有名な宰相が身分を偽って国を救ったとか、
美形の若者が指名手配犯を捕まえたとか、
根拠のない噂話が山ほどある。
真実なんて、世間ではどうでもいい扱いなのだろう。人々は信じたいものを信じているだけ。
自分を守ってくれそうな情報に飛びつくのは、
この不安定な情勢では仕方ないのかもしれない。
だが、実際の人物は、物語のようには格好よくない。
ところで、世の中には不可解なことがある。
それはジョセフィーヌ姫に関する話だ。ジョセフィーヌ姫の世間の評判といえば、
優秀なビジネスマンとして数々の事業を成功させ、
大人気のアーティストになり、
凶暴な指名手配犯を捕まえた戦士であり、
国一番のアイドルやモデルとして美女コンテストで優勝した、
といった輝かしい経歴ばかりだ。だが、実際のジョセフィーヌ姫を見ると、
とてもじゃないが優秀とは思えない。
何をやっても普通の人以下で、失敗ばかり。
容姿も美女どころか、どちらかといえば悪いと評される。 傭兵にセクハラで訴えられたり、
仕事の提出期限に間に合わず関係者に怒られたり、
この前は宮殿の皇子にストーカーして怒られていた。
さらに態度について言うと、
世間ではクールで知性的、仲間想いでチャーミング、
好感度の塊のような評価だが、実際はまるで違う。 持論を振りかざして訳のわからない理由で怒り出し、
手下には偉そうな態度で関係を悪くし、
自分より目立つ姫がいると機嫌を損ね、
イケメンの宮廷職員には露骨に馴れ馴れしく、
仕事を抜け出してはラブホテルに入り浸る。
まさに落ちこぼれそのものだ。
いったいどういうことかと気になり、
個人的に調査したことがあるので報告しよう。要するに、ジョセフィーヌ姫があまりにも出来ない人物すぎるため、
宮殿の人間が優秀な傭兵や家来を雇い、
彼女の仕事を代わりにやらせていたのだ。
それで「優秀すぎるジョセフィーヌ姫」という評判が出来上がった。しかし、このままでいいのかと、国民の一人として悩む。
宮殿の方針は、姫の機嫌さえよければ
世間の評判などどうでもいいというものらしい。
何か大きな災いに繋がらなければいいが…。
私一人ではどうにもできない問題なので、
ただ空を見つめるばかりだ。
長年、宮殿で仕事をしてきたからこそ、
いろんなものを見てきた。原因不明の戦争も、
大抵は姫がいい加減な理由で暴れただけだったりする。
「綺麗になりたかった」「愛されたかった」
「仲間外れにされたくなかった」「立派だと認めてほしかった」
「褒められて嬉しかった」「何もしたくなかった」 こんな些細な理由で、
とんでもない災いを引き起こす姿を見て、
内心あきれると同時に、ただの人間らしい悲しさを感じる。
市中の人々が真実を知ったら、どう思うだろうか。
なぜ市民は、こんな単純な姫のわがままに気づかないのか。
常々、世の不思議だ。おそらく、間違った噂話を放置したり、
遊びに興じることを生活の支えにしているせいかもしれない。
これからの人々が、この災いに気づく日は来るのだろうか。
ところで、ここにいくつかのメモがある。
まだ解読されていないらしいので、
興味があれば調べてほしい。一枚目のメモ
社員ID004 と 社員ID016
名前:_ウ___
ボイスレコーダー、サイコロ、竹馬
社員ID055 二枚目のメモ
社員ID007
名前:__ウ_
名前:__ト
登録日:登記翌日 三枚目のメモ
社員ID004_2
名前:?????
社員ID:その他複数 さらに、一枚の写真もある。
裏にはこう書かれていた:
社員ID002
名前:____
退職日:登記翌日 会社都合 これが何を示しているのか、今も不明だ。
情報が少なく、半世紀ほど前の話らしいので、
今から調べるのは困難だろう。
それでも、未知の謎に挑みたい挑戦者は頑張ってほしい。
そうそう、このことをメモとして書き残してほしいと言われたのを思い出した。
それは王宮の男女比についてだ。公の文章では、男女比は7対3で男性が多いとされている。
だが実際は2対8、いや1対9と言えるほど、ほとんどが女性だ。なぜこうなっているかというと、簡単に言えば、女のいじめだ。
自分より綺麗で目立つ姫がいると、
王宮でいじめが起こり、大怪我を負わされた姫が続出した時期があった。
それ以来、いじめる側の女性以外は男性と偽り、
いじめから守ってきたという経緯がある。
世間では男の王族がひどいと言われがちだが、
実際には女性も同じくらいひどい。
騎士を無理やり恋人にしたり、やりたい放題で、
王宮の人々を常に困らせている。さらに困ったことに、わがままな姫が
結婚したいと言い出し、王宮の王子の中から無理やり相手を探す。
だが、王子も実は姫が偽装している場合が多く、
女同士で無理やり結婚ごっこをさせられる例も後を絶たない。
現状、目も当てられない状況だ。
そろそろ結婚なんて諦めて、
公務に専念してくれればと思うが、
不良として生きてきた姫たちには、それも難しいのかもしれない。というわけで、今日も王宮は大荒れなのである。
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