――魔法少女。
それは本来、希望の象徴で、愛の残像で、世界を救う存在……のはずや。
けど『厄災の魔法少女』に登場する彼女は、
その定義を、笑顔のまま全部踏み潰していく。
主人公・民木モモは、
自分が「魔法少女」であることを疑いもせえへん。
正義も、罪も、善悪も、
全部“子どもの論理”で再定義して、
読者を置き去りにしたまま物語は進んでいく。
これは、可愛い皮を被った物語やない。
可愛い語り口で、読者の倫理を試してくる作品や。
笑ってええのか、
怖がるべきなんか、
それを決めるのは、読んでるあんた自身やで――
そんな挑発を、ずっと投げ続けてくる。
【中辛でのユキナ講評】
この作品の一番の魅力は、
語り手と出来事の乖離が最後まで徹底されている点や。
モモちゃんは一貫して無邪気で、
自分を疑わへん。
せやのに、起きてることは明らかに“取り返しがつかない”。
そのズレが、
・ブラックユーモア
・メタ視点
・児童文学的語り
と結びついて、独特の読書体験を生み出してる。
ただ、中辛として言うなら――
物語の勢いが強い分、
サブキャラや事件がやや消費型になりやすい
読者が「考える前に次へ流される」場面がある
ここは好みが分かれるところやね。
メグ・プチベールの登場は、
この物語に“他者の倫理”を持ち込む重要な一手。
ここから先、
モモちゃんの価値観がどう揺らぐのか、
あるいは揺らがないのか――
そこが本作の真価になると思う。
面白いだけやなく、扱いが難しい。
せやけど、その難しさに正面から向き合ってる作品や。
【推薦メッセージ】
もしあなたが、
王道の魔法少女ものに飽きてきた
ブラックユーモアや皮肉が好き
「笑ってええんか分からん物語」にワクワクする
――そんな読者なら、この作品は確実に刺さる。
逆に、
安心して読める物語を求めてる人には、
少し刺激が強いかもしれへん。
それでも言いたいのはひとつ。
これは“忘れられへんタイプの作品”やということ。
読後に残る違和感ごと、
楽しめる人にこそ、手に取ってほしい一作やで。
ユキナ🌶