第3話 校内分析レポート「語志の堂」構造圖

文部科学省教育環境整備課

施設改修完了報告書

整備番号:R7-0401-特殊

作成日:令和7年3月30日

対象施設:文交大降中小「語志の堂」


1. 総括概要

三語教育実験の中核施設「語志の堂(ごしのどう)」改修完了。

名称由来:「語を志す堂」。別解釈「語の死の堂」。


2. 建築構造

外観

・地上3階、地下1階(※地下2階の存在は未確認)

・外壁:音波吸収材45cm厚

・窓:内側から開放不可

・入口:1箇所のみ


地下1階「沈黙層」

・「語数違反者」個別指導室

・「静寂室」×8:各4㎡、窓なし

・24時間監視体制


1階「基底層」

・語志ホール:床面スピーカー361個埋設

・観察官詰所:全フロア監視システム

・トイレ個室内にも集音マイク


2階「実験層A」

・教室6室:「あ室」「い室」「う室」「え室」「お室」「ん室」

・「ん室」:特殊用途、内部構造不明、設計図黒塗り

・全教室:椅子床面固定、振動センサー内蔵


3階「実験層B」

・純化室:完全無音空間

・反復室:同一単語連続発話訓練

・分解室:長文を3語に分解

・統合室:用途不明、施錠状態


3. 特殊設計要素

「ん室」詳細

・入室許可制

・建設作業員証言:「壁の中に何か入れた」

・音漏れゼロ

・3月29日より施錠


4. K-07システム配置

・教室内:1㎡あたり4個センサー

・トイレ:1㎡あたり6個

・中央制御室:地下2階(存在非公開)


5. 特異事象記録

建設中の異常

・「壁の中から音」

・「ん室の床下、空洞じゃない」

・「設計図にない配線」


完成検査時

・階段の段数が階により異なる

・説明できない共鳴音

・建物全体の微細振動(測定不能)


6. 警告事項

1.4語以上の会話は処罰対象

2.「ん室」への接近禁止

3.地下からの音声は幻聴として処理

4.壁の中の音は無視すること


7. 設計者コメント(削除済み)

[黒塗りを透かすと判読]

「この建物は言葉を殺すために設計した。特に『ん室』は――子供たちがかわいそうだ。言葉を奪われ、最後には――」


承認印

設計承認:黒田修一 ㊞

最終確認:語志■■ ㊞(姓のみ判読)


備考

本報告書の内容について口外禁止。特に「ん室」「地下2階」「壁の中」への言及は禁止。違反者は「沈黙層」での研修を義務付ける。

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