第25話

 今日のデート……ちょっと順調じゃない?


 私――姫宮愛歌は思わずほくそ笑んだ。


 今日はデート中、ずっと「恋人の練習」をすることになっている。

 お互いを恋人扱いすることで、本番にちゃんとエスコートできるようにする……というのが建前。


 真の目的は奏汰君と一線を超えることだ。

 手を繋いでお店を見て回って。

 食べ歩きしながら、間接キスしたり、「あーん」したりして雰囲気を高めて。

 花火を見て、いい雰囲気になってからキス。


 そしてそのままお持ち帰り!


 二人で幸せな夜を過ごす。


 というのが私の完璧な計画である。


 そして今のところ、いい感じに進んでいる。

 ……間接キス以外は普段と変わらない気がしないでもないけど。


 でも、ムードは悪くないはず。


「後で家でやるか」

「……そうね!」


 そして今、花火セットを手に入れることに成功した!

 これで自然と私のお家に奏汰君を招くことができる!


 吹いている! 風が! 確実に! 


 そう思っていた時のことだった。


「「「あ!」」」


 天沢さんと出会ってしまった。

 彼女は浴衣を着ていた。


 ……結構、似合っている。


 どうしよう。私よりも天沢さんの浴衣を魅力的だと思ったら……。

 奏汰君が好きなのは天沢さんだし。


 こ、このまま一緒にデートする流れになっちゃったら……。

 あ、天沢さんに奏汰くんをお持ち帰りされちゃう!

 そ、それだけはダメ!!

 ……と一瞬頭がパニックになってしまった私だが、ふと天沢さんの隣に別の男子がいることに気づいた。


 あれ? もしかして、天沢さん……その男の子とデート中!? 


 もしかして、私、勝った?


「……邪魔すると悪いし、あっち行こう」


 困惑していると、奏汰君に強い力で手を引かれてしまった。

 私たちは天沢さんに軽く会釈してから、その場を離れた。


「天沢、彼氏いたのか……」


 奏汰君は複雑そうな表情をしていた。

 そ、そうか……奏汰君にとっては失恋だから……。


「あぁ、うん。そろそろ作りたいみたいなこと言ってたかな?」


 天沢さんも奏汰君が好きみたいに言ってたけど……。


 もしかして、私と奏汰君の仲の良さの前に諦めたとか?

 二番目に好きな人とお付き合いするようにしたとか?


 私にとってはいい話だけど……。


 いいのかなぁ……私だったら絶対に諦めないけど。

 ……は!


「な、なんか、気まずいな」


 そ、そうだ。


 天沢さんに彼氏ができたからといって、奏汰君が諦めるとは限らない。

 むしろ燃え上がって、猛アプローチをするかもしれない。


 私だったら絶対にそうする。


 もし奏汰君が天沢さんにアプローチしたら……。 


 ――天沢。今の彼氏と別れて、俺と付き合ってくれ!

 ――うん。その言葉を待ってたの!


 二人が結ばれちゃう!!


 だって、二人とも両想いだし……。


「か、奏汰君には私がいるから!」

「あ、あぁ……うん。そうだな」


 私は奏汰君にアピールするために、彼の腕に体をくっつけた。

 胸を押し当てて、必死にアピールする。


 どう? ほ、ほら……私の方が天沢さんよりも大きいよ?

 こっちの方が絶対に揉み応えがあるはず……。


 だ、ダメだ。

 あまり効いてない……。


 こ、こうなったら……!! 


「だからね? 着付け直したいのだけれど……一人だと、少し手間取っちゃうから……手伝って欲しいなって」


 色仕掛けしかない!



_______________





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