第7話 こんなの不純異性交遊じゃん!!



冒頭部は前話と被ってますが、元々、ここにあったものを持って来たものです。


________


 それは体育祭の日のこと。

 私はいつものように奏汰君を誘惑して遊んでいた。


「……ちょっと、こっちにこい」

「え? あ、ちょっと……待ってよ! そ、そんな強引に……」


 奏汰君は私の肩を抱くと、強い力で私を引っ張った。

 抵抗もできず、人気のない体育館裏に連れ出されてしまう。


「な、何よ……こ、こんな場所に連れて来て……」


 人気のない場所に連れて来るってことは、つまり、そういうことよね?

 人目がある場所ではできないことをするつもりってことで……。


 ま、まさか、このままキスしちゃうとか!?

 か、奏汰君に限って、そんな大胆なこと……。


「愛歌」

「え? っキャ!」


 ドキドキしていると、奏汰君は私をあっという間に壁際に追い込んだ。

 そして気付く。

 奏汰君の目が私の胸元に向けられていることに。


「な、何……?」


 奏汰君の手がゆっくりと私の胸に向かう。

 え、えっちなことするつもりだ……。


 だ、ダメ……抵抗しないといけないのに。

 私は胸をドキドキさせながら、思わず目を瞑った。






 体育祭の一週間前。


 転校生――天沢さんがやってきて、早くもひと月が経とうとしていた。

 幸いにも二人の関係は進展していない。


 たまに仲良さそうに話しているけど、それだけだ。

 もしかしたら、奏汰君の片思いなのかもしれない。


 ……奏汰君に好かれておきながら興味ないとか、なんか腹立つけど。

 奏汰君がヘタレで良かった。


 一方で私と奏汰君の関係は……停滞している。

 たまにハグとか、ほっぺにキスとかしてるけど。


 それだけだ。

 最初は戸惑っていた奏汰君の方も、何だか手慣れてきた様子だ。

 何でもないって顔で済ませてくる。


 わ、私はこんなにドキドキしてるのに……!

 く、悔しい。


 もちろん、私も負けじとクールな態度を崩さないようにしているけど。

 でも私と違って、奏汰君は本当に飽きてしまっているかもしれない。


 マンネリというやつだ。

 奏汰君を誘惑するには、ハグとかほっぺにキスくらいじゃ足りないらしい。


 やっぱり、えっちするしか……。


 なんてね。


 私には一つ、秘策がある。

 これをやれば絶対に奏汰君との距離を詰められる上に、既成事実まで作れる最強のイベントが。


 誘うのは恥ずかしいけれど、でも手段は選んでいられない。


 やるしかない!


 去年と同じなら、そろそろだと思うけど……。

 そう思っていた日、帰りのSHRの時間。


 ついに学級委員から体育祭に関するプリントが配られた。


 来た!!


 私は早速、奏汰君を誘おうと声をかけようとするけど……。


「へぇー、好きな競技、出ていいんだ」

「まあ、人気のやつは抽選だけどな。複数出てもいいけど、最低一つは出ないとダメだ」


 天沢さんに先を越されてしまった。

 ぐぬぬぬ……。


 本当は邪魔をしたいけど、ここはグっと堪える。

 だって、天沢さんは奏汰君の好きな人だから。


 意地悪とかしたら、私が奏汰君に嫌われてしまう。

 そんな悪役令嬢追放モノみたいなオチは嫌だ。


 ……な、何で幼馴染の私が遠慮しないといけないの!!


 悔しい!!

 というか、距離近くない?


 付き合ってもないのに……ふしだらでしょ!

 こんなの不純異性交遊じゃん!!


「この男女二人三脚リレーっていうのは?」

「あぁ……うん、まあ、読んだ通り、男女のカップル向けだな」


 ドキっと心臓が跳ねた。

 それは私が狙っていた競技だ。


 「来年、好きな人と一緒に出るための練習しない?」みたいな感じで出場しようと思っていた。


 二人三脚の練習と称して、奏汰君を誘惑して、公衆の面前で既成事実を作って、あわよくばベッドの上で運動会に持ち込んでやろうと企んでいた。


「へぇー……」


 奏汰君の説明を聞いた天沢さんは、ニヤっと笑みを浮かべた。

 な、なに!? その笑みは!

 ま、まさか天沢さんも狙ってたんじゃ……。


「じゃあ、鷹羽君と姫宮さん、出たら? ラブラブだし、ちょうど良いでしょ?」

「べ、別に私たち、カップルじゃないし! ラブラブでもないし!」


 しまった!

 つい、否定してしまった。


 で、でも仕方がないじゃん……まだ恋人同士じゃないもん。

 ラブラブでもないし。


 これで肯定した後に、奏汰君に「いや、俺たちそんな関係じゃないだろ」とか真顔で言われたら死んでしまう。


「あはっ」


 私の言葉に天沢さんは小さな笑い声を立てた。

 彼女は僅かに口角を上げ、それから口元を申込用紙で隠す。

 な、何よ……。


「ふーん、そうなんだ。じゃあさ」


 天沢さんは人差し指で自分自身を指さした。


「私と一緒に出るとか……どう?」


 小首を傾げながら、そう言った。


「え?」

「は?」


 何を……言ってるの?

 一緒にって……二人三脚? 天沢さんと……奏汰君が?


 や、やられた!!


 さっきのはわざと、私に否定させる策略だったんだ!!


「え、えーっと……何で?」

「私、まだ友達いないから。……親しい人と一緒に出られる競技がいいかなぁって。……ダメかな?」



突如、私の脳裏に浮かぶ……「存在しない記憶」。



体育祭に向けて、二人三脚の練習をする二人。

転んだり、縺れたりしながらも、少しずつ息が合ってくる。

触れ合う互いの肌の感触、体温、汗の香りに気恥ずかしさを感じながらも、ドキドキしてくる。

そして体育祭を終えた後の、放課後。

――ねぇ、鷹羽君。この後、お家に行ってもいい?

こうして二人はベッドの上で二人三脚を……。



「あー、いや、その……」


「それはダメ!!」


 脳裏を過る存在してはいけない未来を否定しようと、思わず叫んでしまった。

 シーンと静まり返る教室。


 みんなが私を見ている。


 や、やっちゃった……。


「そ、その……あ、あんなの出たら、恋人だって勘違いされて、た、大変なことになるから! や、やめた方がいいんじゃないかなって……」


 奏汰君と天沢さんの二人三脚なんて……絶対に認めない。

 私は言い訳するように天沢さんに向かって捲し立てた。


 天沢さんは私の勢いに気圧されてか、小さく頷いた。

 次は奏汰君を説得しないと……。


「誘ってくれたのは嬉しいけど。俺も二人三脚はちょっと恥ずかしいかな……別の競技なら、いいけど」


 ……どうやら奏汰君は、最初から天沢さんと二人三脚に出るつもりはなかったみたいだ。

 だ、だよね? だって私と一緒に出るのも嫌なくらいだもんね?


 私がダメで天沢さんがいいなんてこと、ないよね?

 誘ってくれて嬉しいってのは……社交辞令、だよね?


「あはっ。冗談だよ」


 天沢さんはケラケラと楽しそうに笑った。

 そっか、冗談かぁ……。




 ……本当に?



_____________



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