第2話「差し返し職人」

【ステータスログ】

◆ 所持ポイント:2pt

◆ 本日の配分:動体視力+1

◆ ボーナス獲得:ミッション「初配信で10連勝」+1pt

◆ 現在の主な成長:反射神経Lv1/動体視力Lv1


 昨日の配信で、私は「10連勝」を達成した。

 たったそれだけで、知らない名前の人たちが私を観て、コメントして、掲示板で噂していた。


 配信を切ったあとも、心臓はずっとドクドクしていた。

 嬉しいのか、怖いのか、自分でもわからない。


(今日のポイントは……動体視力に)


 念じた瞬間、世界の輪郭がさらに濃くなる。

 画面の細かな揺れ、フレームごとの微差さえ、目が追いついてしまう。


「……始めます」


 また小さく呟いてから、マイクを切る。

 今日も格闘ゲームのランクマッチ。


【コメント欄】

視聴A:お、昨日の無言の人だ

視聴B:無言姫ww

初見:名前ついたの草

古参:連勝数見たい


(落ち着け。昨日よりも見えてる。今日ならもっと勝てるはずだ)


 対戦開始。

 相手は中堅ランカー。レート帯は私より上。


 牽制が飛んでくる。昨日なら反応できなかった速さ。

 でも、今日は見える。ほんの一瞬の硬直――差し返せる。


(今!)


 ボタンを押す。

 鋭い一撃が相手の技を潰し、そこからコンボにつなぐ。


【コメント欄】

視聴C:今の差し返し反応速度おかしい

user11:差し返し職人かよw

モデ:差し返し=相手の技を潰す上級テクです


 気づけば、私は一歩も引かずに勝ちを重ねていた。

 心の中は静かだ。外のざわめきが、すべて遠くにある。


 二本先取の最終ラウンド。相手の体力ゲージはあとわずか。

 焦った相手が大技を振ってくる――。


(……見えてる)


 冷静に差し返し、勝利。


【掲示板:無言配信者総合#2】

1:また勝ったww

5:差し返し精度ヤバすぎる

9:こいつ昨日から成長してるぞ

15:名前決まったな「差し返し職人」


「……終わります」


 配信を切った瞬間、全身の力が抜けた。

 勝った。強くなれた。けれど、それ以上に――


(昨日より“自分が変わってる”のが怖い)


 喜びと恐怖が入り混じったまま、私は布団に倒れ込む。

 だが確かに、私の中の「無言姫」は昨日より一歩前に進んでいた。

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