第3話 一緒にご飯、一緒にお風呂

//SE 玄関の扉を開ける音


「おかえりなさい」


//SE カバンを受け取る音


(ゆっくりとした口調で)

「ご飯にする? お風呂にする? それとも……私とお風呂?」


「私とお風呂がいいの? でもご飯温かいうちに食べて欲しいから、ご飯の後にね」


//SE 茶碗を置く音


「今日は残業多かったみたいだね」


「いいの、全然。君ができるだけ早く帰ってこようと頑張ってくれてるのは知ってるから」


「ほら座って」


//SE 椅子に座る音


「頂きます」


//SE お味噌汁を啜る音


「今日もよく頑張ったね。あとはもう少し仕事が速くなるといいね」


「私も最初は効率が悪かったよ。でも段々慣れていくから大丈夫」


「君のことを頼りないなんて思ってないよ。無理に男らしくしなくたっていいし。私がお姉さんなんだから」


//SE 咀嚼音


「落ち着くね。こうやって二人で食卓を囲める時間、すごく好き」


「ビールも飲む? 買ってあるよ」


//SE 椅子から立ち上がる


//SE 冷蔵庫を開ける


//SE ビールを取り出して冷蔵庫を閉める


「はい、どうぞ」


//SE 缶ビールを開ける音


「かんぱ~い」


//SE ごくごくと飲む音


(うっとりと)

「はぁ~。美味しい。この1杯があるから明日も仕事に行けそう」


「君はお酒強いよね。私はすぐ酔っちゃうからな~」


「大丈夫。ちゃんと自制はするから。君に迷惑掛けたくないからね」


//SE ビールを飲み干す


(テンションを上げて)

「うんまい! ビールいいよね。ワインも好きだけど。君と飲むならどこでも楽しいけどね」


「今日はさ、ロッカーで二人でいられて楽しかった」


「ああいうの、嫌じゃなかった?」


「そっか。良かった。私、わがままだから」


(少し怒った様子で)

「わがままな自覚はあるもん! でも、君には甘えちゃうから」


「君だけだよ。こんな私を晒せる相手なんて」


「私は君の彼女であり、上司でもある。どっちの姿も見せたいの」


「君と職場で会えてよかった」


「覚えてる? 君が私の部下になった日のこと」


(微笑みながら)

「君はすごい緊張してたよね。可愛かった」


「すごく真面目ですごく不器用で。よく叱りもしたけど、君はいつも必死で……」


「だから君が告白してきた時も必死なんだと思えたの」


「何事にも真剣な君が私に真剣になってくれている。そう思ったら断れないよ」


「付き合って正解だった。君は裏でも頑張り屋で……。尊敬できる人だった」


(胸を張って)

「だから私もこうやって自分を晒せるんだよ」


「君は私と出会えて良かった?」


「ふふ。私、可愛いもんね」


(くすくす笑いながら)

「一目惚れって。そんなに最初から性的に見てたってこと? えっち」


(段々頬を赤らめながら)

「私? 私は別に性的な目で見始めたのは……最近だもん」


(嬉しそうに)

「お風呂? そうだったね。この話の後に入るのやなんだけど」


 ◇


//SE 湯船から湯が溢れる音


「気持ちいい~」


//SE 湯船に揺れる波の音


「君の体の上はやっぱり安心する」


「ここは私の特等席だから」


(心細そうに)

「絶対に私以外の女性と触れないでね?」


(渋々と)

「握手くらいならまあ、ケーキで許してあげるけど」


//SE 水しぶきが上がる音


(慌てた様子で)

「ちょっと、顔覗き込んでこないで」


「だって、こんな重いこと言ってるんだもん。君の反応見るのが怖くて」


(不貞腐れた様子で)

「分かった。向き合って言えばいいんでしょ」


//SE 湯船から湯が溢れる音


(気まずそうに)

「これでいいでしょ……」


(視線を逸らして)

「私以外に触れたくないって。別にわざわざ言わなくても知ってるし……」


(こちらに向き直る)

「でも、ありがとう。その気持ちは嬉しい」


「君は本当に真面目だね。そんな本気で受け取らなくていいのに」


「私のこういう重いとこ、面倒臭いでしょ? 気にしなくていいから」


「そういうとこも好き!? 変わった人……。そんなこと言われても何もしてあげられないからね?」


「さ、サキュバスね。そういえばそういう約束だった。そんなに週末が楽しみなんだ」


(訝しんだ様子で)

「期待に添えるかは分からないよ?」


(ちょっと引いた様子で)

「あんまり目をギラつかせないで欲しいんだけど」


(笑いながら)

「私だからいいんだ。私のこと好きすぎでしょ」


「これだから君には油断しちゃうんだよね。なんでも優しく受け入れてくれるから。おかげでボロがいっぱい出ちゃう」


//SE 立ち上がり水が流れる音


(体が密着する)


(耳元で)

「これからも一生、私のことを好きでいてよね」

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