エデラーレ王国の名門、ブラウエン公爵家の令嬢アリアドネ。
その美貌と血統は、国の誇りであり、政略の駒として注目の的だった。
ある日、幼なじみであり婚約者でもあった青年から切り出された一言。
「――結婚してほしい。皇帝陛下と」
それは甘い未来への約束ではなく、彼女の人生を大国ダズブルゴに売り渡す通告だった。
急遽決まった政略結婚。その相手は『冷血帝』と呼ばれる若き皇帝――
血にまみれた戴冠、反対派の粛清、そして前皇妃の死に纏わる暗い噂。
異国の君主は、美しき人形か、それとも冷酷なる支配者か。
しかし、アリアドネはただ従順に従う令嬢ではなかった。
肖像画の筆にすら「醜く描け」と命じる強い意志。
愛も希望も剥ぎ取られた花嫁は、ただの道具では終わらない。
――心を売らずに、帝国に嫁ぐ。
それは愛なき結婚の物語ではなく、王妃という檻の中で「自分」を貫く少女の戦いの始まりだった。
これは、優雅な筆致で描かれる、政略と誇りと反抗の恋物語。