3話裏 枷と寝起き(side入道)
ずっと
入道家は先祖代々の何たらで決まり事に厳しく、家の女は勇しくあるべきだとか何とかで、物心つく頃には武道だの習い事だので遊ぶ時間は殆ど無かった。スカートなんか制服以外で買ってもらえなかった。学年が上がるにつれ何の話題も持ち合わせていない事がみるみる自分を孤立させていく。あたしは聞き上手になった。そうすれば自分のことを話さなくて済んだから。
高校で制服が選択制になってスカートをやめさせられた時、何かが吹っ切れた。その日からあたしは習い事に行かなくなった。何をする事も許されないまま大人になるのが怖くなったのだ。放課後、習い事の時間を潰せるのなら何でも良かった。映画を見た。買い食いもやってみた。その間だけ自分の枷を気にしなくて良くて、少しだけいい気分だった。ミゾレがプリントを届けに行くと聞いて、良い口実ができたと思った。だからあたしは__
ぱちん
「痛ッてァ!」
頬に走る痛みと間抜けな音で入道は目が覚める。変な鳥に遭ってから眠っていたようだ。
金の稲穂に囲まれ、ミゾレが目の前に座っていた。どこだここは。てかなんで外にいるんだ。
「…おはよ」
ミゾレは起きた入道に何をどう説明したものかとあくせくしていた。
しばらく枷の事を考えてる暇はなさそうだった。
____________________
3話中盤に続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます