第5.5話 夏祭り、みなと視点

※この第5.5話は前回の第5話と内容がほぼ同じの為、一部省略しています。スルーしていただいても構いません。



浴衣を着るのは、なんだか気恥ずかしくて苦手だった。

だから私は、普段着に近い格好で夏祭りに来ていた。

「やっぱり、この格好だと浮いてみえるかな……」

屋台の賑わいを眺めながら、胸の奥で小さくため息をついた。


そんなとき。

金魚すくいの台で、一人の女の子が夢中になってポイを突っ込んでいるのが目に入った。

「わっ、また破けちゃった! あぁ〜もう~!」

すぐそばで一緒に見ていた友達も笑っている。


……なんだか楽しそうだな。

気づけば私はポイを手に取っていた。

少しコツを使って、水面をすくう。赤い金魚が、するりとすくい上がる。


「ほら、こうするとうまく取れるよ」

そう差し出すと、女の子たちが同時にこちらを見た。


「すごーい! お兄さん、上手!」

(……えっ、お兄さん!?)

私は思わず笑ってしまった。

(またか……でも、まぁいいか)


気づけば私は、その4人と一緒に歩いていた。

屋台を回り、食べ物を分け合い、4人の笑い声が絶えない。

不思議だ。今日、この夏祭りの屋台で初めて4人と会ったはずなのに、なぜだか居心地がいい。


一人で歩いているときよりも、ずっと楽しい。

「友達って、こういうものなのかな……」

そんなことを考えながら、私は彼女たちの笑顔を見ていた。



やがて、夏祭りの夜空に花火が打ち上がる。

夜空の花火を一緒に見上げながら、ひよりが何気なく尋ねてきた。

「そういえば、お兄さんってどこの学校なの?」


「……ん? わたし、女子だけど?」


一瞬の静寂。

次の瞬間、4人の声が重なった。


「「「「えっ!?」」」」


4人の驚いた顔、ぽかんと開いた口、そして次第に弾けるような笑い声。

私は、思わず一緒に笑っていた。


「やっぱり変かな、こういうの」

「全然! これはこれで面白いじゃん!」

とカレンが勢いよく言う。

「頼れるし、楽しいし、最高だよ!」

その言葉が、胸の奥にじんわりと染みていく。


――この夏祭りに来てよかった。

そう思えた瞬間だった。



この夜の出会いが、私にとっても大切な始まりになる。

そんな予感が、花火の音と一緒に胸の中で鳴り響いていた。

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