トラック3 薪割り密着指導、膝枕付き

//SE:遠くに聞こえる鳥の鳴き声

//SE:薪割りの音、2セット


//少し間を置いて


//少し弾んでいる声で

「ん、ここに来たばかりのときより、おとーとくんの薪割りもさまになってきてるね」


「最初は持ち上げるのも一苦労だったのに」


//鼻高々といった声で

「おねーちゃんとしても、鼻が高い」


//少し疑問混じりに

「……でも、やっぱり、お師匠さまやわたしと比べて、まだまだだ」


//SE:歩いて近づいてくる音

//SE:薪を拾う音

「ほら、みてみて。薪の割ったあとの断面とか、ぶれぶれ」


「それに、左右で大きさも違う。ちゃんと考えて割れてない証拠」


「これじゃあ雑すぎて、お師匠さまに『木が泣いてるぞー』って怒られるよ」


//少し悩むように

「……うーん」


「お師匠さまは、『薪割りは修行の一環だー、見て覚えろー』って言ってるし、基本的には、具体的なことなんにも教えてくれない方針だけど……」


//SE:歩いて間近に近づいてくる音

//近くにずい、と来て

「今日はわたしがおとーとくんの師匠代わりだから、特別に教えてあげる」


//元の位置に戻って

「まずはわたしのやり方、見ててね」


「こうやって斧を両手でしっかり構えて……でも、肩に余計な力は入れない」


「身体の全身を使うんだよ。腕だけじゃなくて、腰も使って、すっ……と振り下ろすの」


「力じゃなくて、流れを意識して。振り上げて……こう」


//SE:薪割りの音(快音)


「ね、簡単でしょ? ……まあ、わたしがやれば、だけど」


「わたしは、あやかしだから、おとーとくんよりも力が強いからね。身体を動かすのも、元から得意だし」


「でもね、おとーとくんだって練習すれば、少しずつできるようになるから……だから、大丈夫だよ」


//側に来て

「じゃあ、実際にわたしが言ったみたいにやってみて。私が側で、教えてあげるから」


//SE:ぎゅっと背中にくっついた音


//不思議そうに

//真後ろから

「……背中に密着されると、やりづらい?」


「こうしてくっついてないと、身体の動き、ちゃんとわからないから。仕方ない。うまくなりたいなら、諦めて」


//仕方なく受け入れるあなた


//どこか満足そうに

「ん。反論がないみたいなので、よし。さっそく、教えていく」


//ユキが前のめりになり、左から聞こえる形で

「まずは、握り方。両手合わせて十本ある指をね、しっかり全部使って握るの。おとーとくんの手の上から、握っててあげる」


「こうして、指のひとつひとつを、ていねいに、にぎってくの」


「それと……腰、もうちょっと落としてみて。背中は……わたしが支えてるから、安心してね」


「これで十分、かな。じゃあ、やってみて。振り上げて、せーの」


//SE:薪割りの音(快音)


//SE:薪を拾う音

//正面から

「ん、さっきよりも、綺麗に出来てる。よくできました」


「頭、出して。ごほーびに撫でてあげる」


//SE:髪を撫でる音


「よしよーし、えらい、えらい」


「……ふふ、照れてるおとーとくんも、かわいい」


「……って、おとーとくん、手、いまちょっと隠してたよね。見せて」


「隠し事はだめ、だよ」


//手を観察しながら

//心配そうに、意気消沈した感じで

「あーお……やっぱり手にマメができてる。ちょっとだけ破けちゃってるような……ね、痛くない?」


//大丈夫と答える弟くん


//返答ぶんの間を置いて

「……大丈夫? だめだよ、無理したら。こんなふうになってるのに、痛くないわけない」


「……やっぱり、人間はか弱いね。薪みたいに、簡単に折れちゃいそうで、怖いな」


//SE:手を撫で摩る音

「痛いの痛いの、とんでけー」


「……ってやると、痛くなくなるんだよね。どうかな?」


「……痛くなくなった? そう、なら、よかった」


「そうだ、お茶、持ってきてあげる。薪割りしてくれてる間に、用意しておいたんだ。いまなら、飲みやすい熱さになってるはずだよ」


「それにね、お菓子も用意してるんだ。お師匠さまが隠してた羊羹があるの。ふた切れくらい、食べちゃってもばれないよ」


「じゃあ、そこに座って待ってて」


//SE:遠くへと歩いて行く足音

//SE:遠くから戻ってくる足音


「おまたせ。隣、座るね」


「で……はい、おとーとくんのぶんのお茶」


「わたしも、喉乾いちゃったから、飲もっと」


「んく、んく……うん。やっぱり寒いときには、あったかいお茶が一番だね。おとーとくんも、そう思わない?」


//肯定を返されて、嬉しそうに

「……だよね」


「そうだ、手、まだ触ると痛いよね。このとっておきの羊羹、おねーちゃんが、食べさせてあげる」


//ずい、と近づいて

「……遠慮しないで。ほら、あーん」


「……うん、うん、いい食べっぷりだね。ほら、わたしのぶんもあげる、あーん」


「ん。よろしい」


SE:コップを置く音


//のびをする形で

「んー……」


「今日も、寒いね。道場の周りは雪、どかしたけど……お外はまだ積もってるし」


「このあとは、お昼ご飯を食べてから、お外で修行の予定だけど……もう少しだけ、休んでからいこっか」


「ちゃんと休むのも、修行、だよ」


「おとーとくんが頑張ってるのは知ってるけど、身体を壊しちゃったら、意味ないから」


//耳元で囁くように

「ちゃんと自分の身体を大事に、ね」


//肩を並べた距離で

「……そうだ。わたしの膝に頭、預けてもいいよ。そうしたら、もっと休まるでしょ」


「ほら、おいで」


//SE:身体を横たえる音


//右耳から

「ふふ、おねーさんの言うことをちゃんと聞いて、えらいえらい」


「よーしよーし」


//SE:髪を撫でる音


//返答分、少し間を置いて


「……重くないか? 重くなんてないよ。おとーとくんのことで、迷惑に思ったことなんか、一度もないよ」


「むしろおとーとくんの役に立てるのなら、それはわたしにとっても、なにより」


「それに、おとーとくんとこうしてくっついてるの、わたし、好きだから。おとーとくんは、嫌?」


//返答分、少し間を置いて


「……嫌じゃない? そう。なら、よかった。なら、もう少しだけ、ここでこうしてよ?」


//SE:風が吹いて、枝が揺れる音


「ん……風、冷たいね」


「でも、おとーとくんとこうしてくっついていたら、あったかいよ」

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