31 剣と魔法の力を尽くして

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 闇属性魔法【隠密】。


 おそらく、レザレが使っているのはその魔法だろう。


 名前の通り、気配を完全に遮断することで相手から認知できなくする魔法だ。


 俺の場合【超反応】のスキルがあるため、【隠密】状態のレザレでも完全に気配を絶つところまでは行かず、多少の動きを捉える程度はできる……といったところか。


 それでも、ほとんど認知できないほどに――奴の【隠密】は高レベルだ。


「なら、これしかないか――」


 俺は剣をだらりと下げ、無防備な構えに移行した。


「……なんのつもりだ」


 どこかからレザレの声が聞こえる。


 あいかわらず【隠密】状態らしく、どこにいるのは分からない。


 けれど、すぐ近くにいることだけは分かる。


「さあな。気になるなら、攻撃してきたらどうだ?」


 俺はニヤリと笑った。


「お前は最強の暗殺者だろう? こんな無防備な男一人殺せなくてどうする」


 と、挑発してみる。


 一瞬の静寂の後、背後から斬撃が迫る。


「――!」


 俺はそれを読んでいた。


 あえて避けずに、斬られる瞬間を待つ。


 本能的に回避行動を取ろうとする体を必死で動かさずに――ただ、待ち受ける。


 ――そして。


 ざんっ……!


 背中に鋭い痛みが走った。


 斬られた。


 その瞬間、【超反応】と【神速】を限界まで高め、発動する。


「そこだ!」


 深々と切り裂かれる前に、俺は超スピードで反転した。


 そして、至近距離にいたレザレと対峙する。


「なっ!? は、速すぎ――」

「捕らえたぞ」


 まさに肉を斬らせて骨を断つ。


 この距離なら【隠密】状態だろうと関係ない。


 食らわせてやる。


「はあっ!」


 俺は【竜眼】の魔力をそのまま放出し、レザレを吹き飛ばした。


「がはっ……!」


 ほとんどゼロ距離射撃といっていい魔法攻撃をまともに食らい、レザレは地面に叩きつけられる。


「がは、はあ……っ」


 手足のどこかが折れたのだろう、レザレは弱々しく立ち上がるものの、それ以上の動きがとれないようだ。


 今ので【隠密】も解けてしまっているのか、姿がはっきりと見えた。


「ここまでだ、レザレ」


 俺は彼に歩み寄る。


 斬られた背中が痛むが、重傷というほどじゃない。


「く、くそ……」


 レザレは表情を歪めて俺をにらんでいる。


「誰の命令だ?」


 俺は単刀直入にたずねた。


「暗殺者が依頼主の名を明かすと思ったか? 舐めるな」


 レザレの眼光が鋭くなる。


 覚悟が決まった瞳だった。


 たとえ殺しても、依頼主の名前は吐かないだろう。


 いや、その前に自ら命を絶つかもしれない。


 どうやって口を割らせるか――。




 ――ざしゅっ!




 その時、突然レザレの首が宙を舞った。


「えっ……?」


 気配も、何も感じなかった。


 ただレザレに致命的な一撃が加えられ、首を切断されたことだけは分かった。


「誰だ――!」


 俺は周囲を見回しながら身構えた。


「暗殺者を使わせてしまったのは、我が失態……」


 暗がりの中から人影が現れる。


「ここで償うとしようか」

「お前――」


 俺は表情をこわばらせる。


 先日の演習の際に俺やナターシャたちの前に現れた魔族だ。


「オルバレオ……だったか?」

「その名も、我らが存在もまだお前たちに知られるわけにはいかん」


 オルバレオが俺を憎々しげににらんだ。


「ここで口封じをさせてもらおう」







※次回から10日に1話ペースの更新になります。

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