第12話

朝日が、洞窟の入り口から差し込み、俺の顔を優しく照らした。


俺は、まぶしさに目を覚ます。全身から、疲労が抜けていくのを感じた。


「エレノアさん、おはようございます……」


俺は、そう言って、隣で眠っているはずのエレノアに視線を向けた。


だが、そこには、誰もいなかった。


(エレノアさん……?)


俺は、一瞬、何が起こったのか理解できなかった。彼女は、昨日、確かに俺の隣で眠っていたはずだ。


「エレノアさん!どこですか!」


俺は、慌てて彼女の名前を呼ぶが、返事はない。


俺は、洞窟の中を走り回り、彼女の姿を探した。だが、彼女の痕跡は何も残されていなかった。


(まさか、魔物に襲われたのか……?いや、それなら、争った跡があるはずだ……。じゃあ、追手に捕まったのか……?)


俺の頭の中は、最悪の事態ばかりがよぎる。


その時、俺は、手に握られているはずのエレノアのパンティーの感触がないことに気づいた。


俺は、慌ててポケットを探るが、そこには何も入っていない。


俺は、昨日まで、エレノアのパンティーを握りしめていたはずだ。その力で、リリスを退け、騎士団たちを退けた。だが、今は、何も残されていない。


「な、なんでだ……?」


俺は、呆然として、自分の手を見つめた。


すると、俺の脳裏に、一つの光景がフラッシュバックした。


リリスの黒い雷を打ち破った、あの眩い光。


あの時、俺の手に握られたパンティーは、まるで粉雪のように、光とともに、消えていった。


(そうか……!俺のチート能力は、力を使い果たすと、パンティーが消えてしまうのか……!)


俺は、その事実に、絶望的な気持ちになった。


俺は、エレノアの力を使い果たしてしまったのだ。


「エレノアさん……!どこにいるんですか!」


俺は、再び、エレノアの名前を呼ぶ。


だが、返事はない。


俺は、洞窟から外に出て、彼女の姿を探した。


「悠斗様」


その時、背後から、声が聞こえた。


俺が振り返ると、そこに立っていたのは、エレノアだった。


彼女は、いつもと同じ、凛々しい顔立ちで、俺を見つめている。


「エレノアさん!どこにいたんですか!心配しました!」


俺は、安堵と、そして、怒りが入り混じった声で、彼女に駆け寄った。


すると、エレノアは、静かに俺の手を制した。


「落ち着いてください、悠斗様。わたくしは、ずっとここにいました」


「ここに?でも、俺、エレノアさんの姿が……」


俺がそう言うと、エレノアは、ふっと、小さく笑った。


「わたくしのパンティーを失った貴方には、わたくしの存在すら、感じ取ることができないのでしょう」


エレノアの言葉に、俺は、ハッとした。


(そうか……。俺の力は、パンティーがなければ、発動しない。そして、そのパンティーを失ったことで、俺は、エレノアの気配すら感じ取ることができなくなっていたのか……)


俺は、その事実に、再び絶望的な気持ちになった。


「すみません、エレノアさん……。俺、あなたのパンティーの力を、使い果たしてしまいました……」


俺がそう言うと、エレノアは、静かに首を振った。


「いいえ。貴方が、わたくしの『経験』を、この世界を救うために使ってくれたのです。むしろ、感謝しています」


彼女は、そう言うと、俺に向かって、一冊の地図を差し出した。


「わたくしたちの旅は、まだ始まったばかりです。貴方は、新たな下着を手にしなければなりません」


「新たな下着……?」


俺が問いかけると、エレノアは、地図の、一つの街を指差した。


「この先にある街、『アリスの街(Alice's Town)』。そこには、この世界で最も美しい下着を扱う店があります。きっと、貴方に力を与えてくれる下着が見つかるでしょう」


エレノアの言葉に、俺は、顔を赤くした。


(まさか、次の目的地が、下着を探す街だなんて……)


だが、俺には、選択の余地はない。


俺は、エレノアの力を失った。このままでは、魔物にも、魔王軍の刺客にも、勝てない。


その時、俺は、ある一つの事実に気づいた。


エレノアのパンティーが、消えてしまった。


そして、彼女は、ノーパンだ。


俺は、思わず、エレノアの鎧の腰部分に視線を向けてしまった。


「エレノアさん……。あの……」


俺が言葉を濁すと、エレノアは、静かに微笑んだ。


「はい、悠斗様。わかっています。わたくしにも、新たな下着が必要です」


エレノアは、そう言うと、俺をまっすぐに見つめた。


「悠斗様。わたくしにも、下着が必要なのです。戦うために、わたくし自身を、奮い立たせるために……」


エレノアは、そう言うと、少しだけ、悲しそうな、そして、恥ずかしそうな表情を浮かべた。


俺は、エレノアの言葉に、胸が熱くなるのを感じた。


(エレノアさんは、俺のために、下着が必要だと言ってくれているんだ……!)


俺は、彼女の言葉を、まるで、俺への告白のように感じてしまった。


「……もちろんです、エレノアさん!行きましょう!俺が、あなたに、最高のパンティーを探してきます!」


俺が力強く答えると、エレノアは、ふっと、安堵したように微笑んだ。


「……ありがとうございます。貴方なら、きっと、わたくしに力を与えてくれる下着を見つけてくれるでしょう」


彼女は、そう言うと、静かに俺の隣を歩き始めた。


俺とエレノアの、新たな旅が、今、始まった。


下着を探す旅。


そして、勇者と騎士団長が、お互いを意識し始める、新たな旅。

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