lost fang 失われた牙

きゃんでぃろっく

001 始まり 

 キューブが連なり果てなく広がる世界αιώνιαエオニアはその名の通り永遠を紡いでいる。カオスとガイアにより混沌と天地創造から、あらゆる存在がエレメというで構成された生命を育んでいる。ガイアはカオスのもとで『愛』という純然たる光のエレメで太陽を生み、海と大地を生んだ。そして、神々を生むと神々はガイアを真似て人を創った。このようにエレメは泡によって複合体を生むようになり、純然なエレメである光と水と土の精霊たちは世界を見守っていた。複合体はあらゆる秩序を乱しつつ誕生、生長を繰り返したが、それでも世界は調和しているようだった。


 そんな世界の内に人ならざる者が誕生した、アタナシオスだ。

アタナシオスはヴァンパイアの始祖アルケーとして、モンスター最強の地位に君臨する。彼の父グラウコスは海の神であったが人となり、母スキュラは人間であった。父に執着していた[古代の魔女キルケー]の呪いで、両親がつけた『不死の者』という名前の通り、この世の自然を超えた最強のモンスターとして誕生したのだった。


 アタナシオスは[古代の魔女キルケー]との因縁をつけるために軍隊を構成した。人をヴァンパイアに変化させるが、それらはアルケーの資質には及ばない、アタナシオスはそれらをアルケーと区別してアルグルと名付けた。

アタナシオスが変化させた最初のアルグルはアタナシオスに従順で完璧な主従関係がみられた。彼はアタナシオスから[バレ従者]のレオンと名付けられ、唯一無二の存在となる。アタナシオスはレオンに全幅の信頼を寄せた。


 アタナシオスとレオンは日夜人々を変化させアルグルの軍隊を増やしていった。

そして二人が信頼するアルグルにも噛む権利を与えたが、[マスター主人]であるアタナシオスから遠ざかれば遠ざかるほどヴァンパイアとしての資質が低下した。このことを鑑みて、レオン以外のアルグルが噛んだ者は[バレ従者]とは呼ばなくなった。

また、[マスター主人]と[バレ従者]の間には、瞬時に思考や想いが伝わることがあり、これをストルゲ以心伝心と言った。

やがて、多くの人間を襲ったせいで人間界でヴァンパイアの存在が知られることになり、人間たちを守っている魔女を味方につけたり、高位の魔女に対抗するために他のモンスターを従える必要ができた。

アタナシオスは最強の存在故に多くのモンスターたちを従えたが、繁殖能力の優れているモンスターたちとの軍事力の差は徐々に均衡へ近づいていく。特にウルフの繁殖力は脅威であった。


 モンスターの中で最強であるアタナシオスには、たった一人の妹ラミアーがいる。彼女はこの世の2番目のアルケーだ。

この妹は兄と違い幼い頃から残忍で性悪な性質で、非道な魔術に傾倒していた。兄ばかりを愛する両親を憎悪し、[古代の魔女キルケー]と結託して両親を殺害、アルケーを支配することを企て[古代の魔女キルケー]の策略に便乗して兄と契り、子供を産んでいく。


[古代の魔女キルケー]を滅することができず苛立っていたアタナシオスは、妹の策略には気がつかず、ついに両親を失って自暴自棄になっていた。そんな時期を見計らってラミアーは兄を唆して契り子を産んだのだった。

こうしてアルケー一族にアルケーの子たち、新たな生命が誕生し、モンスター最強の地位は不動のものとなっていく。

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