第54話 完璧な攻略法?

地面に倒れた月涙蛾にみぞれがとどめの一撃を加えると、死体を残さず、ゆっくりと崩れては、月光のように清らかな金色の粉末へと変わっていった。


「わぁ……」


ふゆこはその奇跡のような光景を見て、思わず小さな感嘆の声を漏らした。


「きれい……魔物なのに、死んだら星のかけらみたい……」


クスマはその美しい粉末を呆然と見つめ、脳内に響いた冷たい機械音のチーム課題を思い出し、「そういうことか」という考えが、彼の心の中で爆発した。

(待てよ、金色の粉末……チーム課題は……『月塵』の収集?まさか……)


「月塵!」


彼はもはや抑えきれず、興奮して声を潜めながら叫んだ。


「これが『月塵』だ!」


みぞれは屈み込み、刀の先でそっとその粉末をいじり、危険がないことを確認してから頷いた。彼女は手際よく空間リングから空の水晶瓶を取り出し、地面の『月塵』を慎重に全て中へと入れていく。


「よし」


みぞれは瓶に蓋をし、リングにそれを収めると、平然と言った。


「これで一つ完了。あと十九個ね」


その瞬間まで、周囲にもう脅威はなく、任務目標の手がかりも見つかったことを確認し、一行はようやく心の底から安堵のため息をついた。


「うぅ……」


ふゆこはできたての、存在感抜群のこぶをさすりながら、涙目でクスマを見上げた。


「師匠……頭のこぶが、ドクンドクンって脈打ってるみたいです……」


みぞれは空間リングから、手際よく小さな救急箱を取り出した。彼女はまず消毒液を浸したコットンでふゆこのこぶを清拭し、次にひんやりとした軟膏を塗り、最後にクッション代わりの厚いガーゼを貼った。


「はい」


みぞれは処置を終えて言った。


「これで後でヘルメットを着けても、直接傷口に当たらないわ」


「おい、もやし」


傍らのクレイが、からかうような目で彼を見た。


「さっきのは何の叫び声だ?この秘境に女幽霊でもいるのかと思ったぜ」


「あれは戦術的索敵作戦だ!」


クスマはすぐに胸を張り、負け惜しみを言った。


「月涙蛾のような生物は、近くに仲間が絶対にいる!俺のあの叫び声は、わざと藪を突いて蛇を出し、周りに他の伏兵がいないか確かめるためだったんだ!見ろよ、今すごく静かだろ?俺の威嚇が効いた証拠だ!」


「はいはい、もう騒がないで」


みぞれはため息を一つつき、その無意味な口論を遮った。


「先にヘルメットを着けて、周囲の安全を確認しましょう」


みぞれの提案で、四人はそれぞれ持ってきた「探照鉱夫ヘルメット」を頭に着けた。

四条の凝縮された光のビームが瞬時に洞窟の闇を突き破り、まるで四本の鋭い光の剣のように、彼らの周囲約十メートルの光景をはっきりと照らし出した。


─ (•ө•) ─


その時、クスマは突然「全て理解した」という顔つきになり、人差し指を立てて空中でミステリアスに振りながら、一同に向かって秘密めかして宣言した。


「諸君!この秘境の完璧な攻略法を見つけたぞ!」


「おおっ!さすが師匠です!」


ふゆこはすぐに崇拝の眼差しを向けた。


「本当かよ?こんなに早く?」


クレイは疑った。


クスマは一つ咳払いをし、両手を腰に当て、自分では格好いいと思っているポーズを取り、まるで世紀の大理論を発表する科学者のように、突拍子もないことを言った。


「考えてみろ!奴らはこんな真っ暗な洞窟に生息しているんだ、間違いなく光に弱い!俺たちがヘルメットの光でこう、照らしてやれば」


彼はわざと自分のヘッドライトで遠くの暗闇を揺らしてみせた。


「奴らは腰を抜かして戦闘力を失うんじゃないか?そうなれば、俺たちのなすがままじゃないか!」


しかし、その知恵に満ち溢れているかのような発言が招いたのは、みぞれのため息だった。


「クスマ」


みぞれはまるで出来の悪い生徒を見る教師のような、「やれやれ」といった目で彼を見つめ、さらには指を伸ばして、気怠そうにこめかみを揉んだ。


「前の『魔物生態学』、また真面目に聞いてなかったでしょ?」


「えっ?」


クスマは言われて一瞬固まり、自信満々だった表情がこわばった。


「月涙蛾はね」


みぞれは独り言のように、その「優等生」然としたフィールドワークを始めた。


「複眼が暗闇の環境で進化したから、強すぎる光は処理できないの。だから、単一の強い光は、感覚が過負荷になって『減速』させるだけで、気絶させることはできない。これは、前の魔物生態学の授業で、先生が簡単に触れていたわ」


クスマが「授業を真面目に聞いていなかった」ことで内心焦り、視線をあちこちに泳がせていると、傍らのクレイが、天下の騒乱を望むかのように、からかう口調でみぞれに告げ口をした。


「みぞれ!お前知らないだろ!前の授業でさ、あのじいさんが上で講義してる時、こいつ(彼は顎でクスマを指した)下でこっそり『秘境探検王』のボードゲームを取り出して、ふゆこを無理やり付き合わせて一時間丸々遊んでたんだぜ!ふゆこみたいな真面目な生徒まで道連れにしやがって!」


「そ、そんなこと……」


ふゆこの顔が「カッ」と赤くなり、小声で弁解した。


「師匠はあれは戦術の訓練だって……」


「そうだ!」


クスマはすぐにその救いの綱に飛びついた。


「あれは『秘境探検戦略』のシミュレーションだ!クレイみたいな筋肉でしか考えられない奴には分からないだろうな!」


「へぇー、そうかい?」


クレイはにやりと笑い、みぞれの方を向いて言った。


「じゃあ、ふゆこに負けた後、地面に這いつくばってスライムの真似をしたのも、シミュレーションの一環なのか?」


「……」


─ (•ө•) ─


クスマが大声で言い訳しようとした 、その時。みぞれが突然手を伸ばし、彼の口をぐいっと塞いだ。


「うぐぐぐー!(何しやがる!)」


クスマの抗議の声は完全に手のひらに遮られ、彼はまるで首根っこを掴まれた猫のように無駄な抵抗を試みた。


みぞれは手の中の動きを完全に無視し、もう片方の手の人差し指を唇の前に立て、状況が飲み込めていないクレイとふゆこに、「しーっ」というジェスチャーをした。彼女の眼差しは冷たく鋭く、一同に視線で、遠くにある巨大な蛍光キノコの方を見るよう促した。


彼らのヘルメットの光の端、その傘のような巨大キノコの下に、数匹の月涙蛾が、静かに翅を休め、安心したように、傘から剥がれ落ちる「光胞子」を吸っていた。キノコの幽玄な青い蛍光が奴らの翅を透かし、翅の上の紋様をも輝かせ、それは極めて幻想的で、そして極めて静謐な光景だった。


その瞬間まで、クスマが注意深く観察したことで、彼はようやくはっきりと見ることができた。月涙蛾のその深い茶色の翅の上に、左右それぞれ、形がわずかに異なる、月光の下の涙の雫のような、幽玄な青い紋様が刻印されていることを。


「わぁ……きれい……」


ふゆこの眼差しは光り輝き、先ほどの危険や頭のこぶのことなどすっかり忘れ、


「翅の紋様が、呼吸してるみたいに、チカチカしてる……」


「ふん、ああいう姿か」


クレイは声を潜めたが、手は無意識に背中の矢筒に滑り、指先で矢羽をそっと撫でるように触れた、戦意に満ちた目で評価する。


「翅の縁の部分が、黒曜石みたいに鋭利だな。射るなら、関節を狙わないと」


「違う違う、お前ら全然要点が見えてない!」


クスマはついにみぞれの手から逃れると、一同の真ん中に顔を寄せ、声を潜めて、まるで世紀の大秘密を発見した学者のように、得意げに言った。


「見ろよ、あの青い涙の紋様を !見えたか?微かに光ってるだろ!こいつは『ハイライト弱点マーカー』だ!間違いなく奴らの魔力コアか防御が最も薄い部分だ!そこを攻撃すれば、絶対にクリティカルダメージが出るぞ!」


しかし、クスマがまだその「学術的発見」に浸っている最中、みぞれが直接冷や水を浴びせた。


「クスマ、もしあなたの『ハイライト弱点マーカー』理論が正しいなら、どうして生物は自分の一番脆い部分を、そんなに目立つようにするのかしら?」


彼女は冷静に問い返した。


「それは不合理よ」


みぞれの分析に、それまでそれぞれ異なる感情に浸っていた三人は、瞬間的に彼女へと全ての注意を集中させた。


クレイの「うずうずしていた」眼差しは真剣なものに変わり、ふゆこの「わぁ、きれい」という感嘆も好奇心へと変わり、そしてクスマは「え?言われてみれば……」という表情を浮かべていた。


彼女は一息置き、視線をその青い紋様に定め、自らの観察結果を述べた。


「さっきの蛾、血は青色だったと記憶しているわ。そして見なさい、翅の上のこの二つの涙の紋様、色も血とほとんど同じ。その上、それ自体が微かに光を放ち、その光の質感は内側から滲み出るようで、周りの翅の材質とは全く違う。まるで何か滑らかな固体みたい」


一同が見守る中、みぞれはより論理的な推測を導き出した。


「だから、この二つの紋様は弱点というより、むしろ『凝固』あるいは『結晶化』した血液で、エネルギーを蓄えるための一種の『結晶シールド』を形成していると考える方が自然ね」


「そして私の推測では、この『結晶シールド』にはエネルギー貯蔵以外に、もう一つ役割がある。月涙蛾の翅は高速で振り下ろす必要がある。もしこの二つの固い結晶体が『骨格』として支えていなければ、翅はとっくに折れているはずよ」


「おおっ……」


みぞれの分析を聞き終え、ふゆこは感心したように彼女を見つめた。


「みぞれちゃん、すごい。物知り……」


「ふん」


クスマは不服そうに小声で呟いた。


「なんだよ『結晶シールド』って……そんなに複雑なわけないだろ。あの二つの紋様は、八割方ただの飾りだって。大したことないさ」


「お?」


クレイはすぐに彼の失言を捉え、にやりと笑ってツッコミを入れた。


「お前、さっきはその『ただの飾り』を、何かの『ハイライト弱点マーカー』で、防御が最も薄い場所だって言ってたよな?」


「あれは……あれは比喩だ!一種の比喩!お前には分かるわけないだろ!」

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