【番外編】未来へ進め、ルシアの裏物語

序章 望みを繋ぐ黒魔術計画

第0話 プロローグ──彼女は未来を見据えて

国王マスオの死をきっかけに甦った記憶

それは前世で遊んだゲーム〈平民聖女と英雄の奇跡〉の筋書きと〈未来視〉が突きつける〝破滅〟の光景だった

その中には王妃サアの悪行もしっかり焼き付いている




王女ルシアはその〝破滅〟を胸に剣を取った

処刑は民衆にとって“悪女の暴走”にしか見えないだろう

だがそれでよかった

王妃サアが子供たちに与えた苦痛をほんの一滴でも返せるなら、そして未来の芽を守れるのなら


しかし王妃サアは縛られたままなおも微笑を崩さない

その顔は恐怖でも懇願でもなく、どこか恍惚すら帯びていた


「ルシア……あなたはやっぱり私の愛しい子

人を支配する悦びを知るその瞳……母はそれを誇りに思うわ」


──ああ、この女は最後まで狂っている


ルシアの中で何かが弾け、冷え切った目で母を見下ろし剣を振るった

石畳を鮮血が染め、広場には怒号が渦を巻く

その瞬間、ルシアは決意を刻んだ


──憎悪はすべて、私ひとりが背負って逝こう




王城に戻ったルシアは玉座に座り、静かに思索を巡らせる

今の自分は前世でプレイヤーの記憶を抱えた悪役王女

筋書きを知り、終わりを知り、その上でなお未来を選べる立場にある


だが──〈未来視〉は告げる

〝努力では未来は変わらない〟


善人として〝国〟に尽くせば──

幼き頃に切り捨てた親族の逆恨みを買い、闇討ちに遭い果てる

その報いとして、親族もまた〝犯罪者〟として処刑される最悪の結末が待つ


わがままを通せば──

非道の限りを尽くした末に、当然の報いとして〝ギロチン〟による断罪が下される


〝民〟のために尽くせば──

悪徳貴族の思惑に呑まれ、やがては失墜し

薬漬けにされた〝お飾りの王〟として、傀儡にされ生き殺しの運命に堕ちる


どの未来も〝破滅〟にしか繋がらない

ならばその決められた運命さだめは受け入れよう

ただし全てを筋書き通りになんてさせない


この世界に生きる全ての者が──

幸せな物語ハッピーエンドを迎えられるように




ルシアは目を閉じ、前世の記憶と〈未来視〉を重ねて未来の厄災バッドエンドを回避する方法を探る

やがて一つの道を見つけると執事ムチを呼び出した

呼び声に応じ、跪く忠実な影へと最初の命を告げる


「科学大国からの捕虜を──密かに解放しなさい」




これはほんの序章に過ぎなかった

王妃サアの断罪を皮切りに、裏で積み上げる計画はすでに始まっていた


──〝私〟の未来けつまつは変えられない

これまでの選択が私を縛る枷となるから

だが〝世界の結末〟なら変えられる

私が思い描く未来へいわへと


その為なら私は悪役王女としての“わがまま”を演じきる

その果てに断罪が待つとしても──救うべき未来すべてのもののために

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