第7話 試験は試練?

 次の日ラピンラピンは、学校で進路について担任の先生に相談した。


「ラピンラピン、やっと進路に目が向きましたか」

「はっきり言って、遅いですよ。スタートが」

「アナタらしいと言えば、そうですが」

「で、希望は?」


 担任の先生は、淡々とした人だったが、少しほっとした表情を見せた。


「巫女庁の試験を受けてみたいのですが」


「あなたの場合、相当がんばらないといけませんよ。そう言えば、お母様も巫女庁でしたね。それが、どのくらいアドバンテージになるか……。取り敢えず、一次の筆記試験を突破せねばなりません」


 担任の先生は、机の上に高く積まれた本の山から、器用に真ん中の分厚い本を引き出した。本の山は少しぐらついたが、形をとどめていた。


「これは、巫女庁試験の過去の問題を集めたものです。これを貸しますので、しっかり勉強するように」


 渡された本は、ずしりと重く、少しカビの臭いがした。



 ラピンラピンは教室に戻ると、自分の席に座り、机に突っ伏した。


「ラピン、大丈夫?」親友のアリシアが、心配そうに声をかける。


「もう、疲れた。先生と一対一で話すのは、緊張するね」顔だけ上げて、答えた。


「なにそれ、試験の過去問?」机の上の分厚い本を指さして言った。

「そう。巫女庁の。先生が貸してくれた」

 

 すると、それを聞きつけた他の生徒たちが、騒ぎ始めた。


「いねむりラピンが、巫女庁の試験、受けるってよ」

「無理に決まってんじゃん」

 

 教室内に、冷ややかな笑いが広がる。


「大丈夫よ、ラピン。まだ時間はあるわ。がんばって!」

 アリシアだけが、まっすぐにラピンラピンを見つめ、応援した。

 ラピンラピンは、親友の優しさを感じていた。


 放課後になり、閑散とした教室。いつもは、さっさと寄宿舎に帰ってしまうラピンラピンだったが、今日は残って勉強することにした。


「む、むずかしい……」過去問の本を開いたとたん、絶望が襲ってきた。

 本を閉じ、また机に突っ伏すラピンラピン。


「始めは、そうなるわよ。私に、見せて」隣に座っていたアリシアが、優しく言う。


 アリシアは、ラピンラピンと違って、成績が良かった。卒業後は、占い師の祖母の家で修行することが決まっていた。


「この問題は、こうすればいいのよ」ラピンラピンのノートに、回答をさらさらと書いた。


「さすが、アリシア。わかりやすいわ。ありがとう」


「次の問題は、この前授業でやったことの応用問題だわ。解けるんじゃない?」

「そうね。やってみる!」


 ラピンラピンは、問題に向かったが、ふと思った。


「アリシア、あなたも一緒に巫女庁の試験、受けない?」

「私は、進路がもう決まっているの」


 ラピンラピンが何気なく言った言葉に、アリシアは笑顔で答えたが、内心イラっとしていた。

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